国内でのフェアトレードの普及・啓発活動を行う認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンは、5月のフェアトレード啓発全国キャンペーン「ミリオンアクションキャンペーン」開催を前に最新の国内フェアトレード市場規模を発表します。
■推計史上最大の増加幅:SDGsの認知拡大と企業のサステナビリティ戦略
2022年のフェアトレード認証製品の推計市場規模は195.6億円となりました。2021年の157.8億円と比較をすると24%増という過去10年で最大の伸び率となり、さらに市場規模の拡大幅で見ると前年比38億円と推計史上最大の拡大を記録した1年となりました。
この主な背景には、主要産品であるコーヒーにおいてカフェなどの業務用と小売用の商品が共に売上が拡大したこと(フェアトレードコーヒー市場は前年比122%)や、ノベルティとしてのフェアトレードコットン雑貨の活用拡大したこと(フェアトレードコットン市場は前年比199%)が挙げられます。またフェアトレードの紅茶やバナナ、チョコレートも販売店舗や商品が拡大し好調な伸びを記録しました(紅茶は前年比236%、バナナは前年比142%、カカオは前年比110% )。
こうした好調の背景には、国内におけるSDGs(国連持続可能な開発目標)の認知や報道の急上昇により、消費者にとって日常生活における社会貢献がより身近となったことで、消費者からのフェアトレード商品へのニーズが拡大していることが言えます。またSDGsへの取組みの一環として、企業がノベルティや施設内のカフェにフェアトレードを導入することも増えました。昨年に引き続き小売主要大手各社はサステナビリティ戦略に力を入れ、プライベートブランドでのフェアトレード商品化や品揃えの拡充を進めています。
これまで多くの日本企業が環境問題への取組みに注力してきましたが、直近では政府・市民団体などの間で企業にサプライチェーン上の人権への配慮を求める動きが急速に活発化しています。例えば2021年には外務省が「ビジネスと人権に関する行動計画」を発表し、2022年9月には政府として人権尊重に関するガイドラインも発行しました。特に人権リスクが高いとされる開発途上国の生産地における人権課題に取り組むための数少ないツールとして、国際フェアトレード認証への産業界の注目が高まっています。また人権問題に加えて、気候変動を含む環境問題など幅広い課題にアプローチできることもフェアトレードを導入する背景とされています。
■日本市場は広がっているものの、欧米諸国と比べると17分の1など。依然として差は大きい
フェアトレード・インターナショナルの本部があるドイツと日本の市場規模を比較すると、ドイツは2,727億円と、日本の約17倍。一人当たりの年間購入額が最も多いスイスと年間購入額を比較すると、スイスは12,765円と日本の約101倍という結果となりました(※)。欧州諸国で規模が大きい背景には、消費者の環境・社会課題に対する意識の高さや、フェアトレードの認知の高さを受けて、企業が積極的にフェアトレードを取り入れる傾向があります。
欧州と日本の差はまだ大きいものの、前年と比較するとその差は縮んできているため、今後の日本市場の躍進が期待されます。(前年はドイツと日本の市場規模の差は約18倍、スイスと日本の一人当たり年間購入額の差は約108倍でした)(※)2021年に市場統計を公表している国と比較
■フェアトレード月間である5月1か月間にミリオンアクション2023を開催
フェアトレードの商品購入やSNS投稿、イベント参加などのフェアトレードに関するアクションが、1アクション=1円として途上国への寄付になるキャンペーンです。寄付金はフェアトレード・インターナショナルのメンバー組織である中南米生産者ネットワークCLACを通して、生産者組合へ届けられ、今年のキャンペーンテーマのひとつ「環境」に関する取り組みを行う気候変動基金から、各生産者組合の実施する事業に充てられます。
・ミリオンアクションキャンペーン2023:https://fairtrade-campaign.com/