どんな居酒屋にもそのお店に通う人々の思いが重なり、そしてそのたくさんの思いはそれぞれの居酒屋が醸しだす独特の雰囲気となっていく。それゆえ、日本各地に多く人々を虜にする居酒屋がキラ星のごとく数多存在しているのだ。
例えば、あの吉田類も絶賛する大衆酒場、東京・江東区南砂町の「山城屋酒場」に、新潟の郷土料理からラーメンや洋食まで味わえる新潟市・古町の老舗居酒屋「喜ぐち(きぐち)」、北海道随一の日本酒の品揃えと美味しいツマミのお店札幌市北区「味百仙(あじひゃくせん)」、食い倒れの町大阪では、鴨の焼き鳥が味わえる「とり平」、そしてあの開高健も愛したクジラのおでんが楽しめるたこ梅、さらには名古屋にいったら絶対に行っておきたい居酒屋「歓酒亭 大安(かんしゅてい だいやす)」などなど、数え上げればキリがない。
そんな全国にある美味しい居酒屋の中から、今回は、山梨県甲府市に佇む老舗のどて焼きのお店をご紹介したい。
お店の名前は「どてやき下條」だ。
・創業1937年(昭和12年)の老舗酒場、それが「どてやき下條」
こちらのお店の創業は1937年(昭和12年)。
1937年(昭和12年)といえば、第2次世界大戦が勃発するちょうど2年前であり、フランスのパリで開かれた万博博覧会では当時のスペイン内戦を象徴する、パブロ・ピカソの『ゲルニカ』が出展された年でもあるのだ。また盧溝橋事件により日中戦争が勃発、国内では川端康成、石坂洋次郎、永井荷風など、多くの優れた作家が作品を発表した年でもある。
そんな激動の時代に生まれたこちらのどてやき屋は、今なお多くの人々に愛されているのだ。