外反母趾、浮き指、かがみ指、寝指…。現代の日本では、足のトラブルに悩まされている人が急増していて、日本の国民病と言っても過言ではない状況になっている。例えば外反母趾は、成人のおよそ3分の1が抱えている疾患で、特に高齢の女性は9割以上が外反母趾の症状が見られるという。
そもそも多くの日本人が、日常的に靴を履くようになったのは第二次世界大戦後のこと。まだ80年ちょっとの歴史でしかない。足と靴の先進国であるドイツでは、5歳までに9回もの足の定期健診の受信が義務付けられていて、足や靴を考える「足育」の思想が流れているという。かたや日本では、足の健診をする機会はほとんどなく、自分の足に合わない靴を小さな頃から履き続けている人も少なくない。
「東京オーダーシューズ普及促進会」は、世界的に技術と仕上がりの美しさで世界的に注目を集めている日本の手作り靴の認知を広げ、革職人の広報支援を目的に、2023年に発足した非営利団体で、経済産業省の助成によって活動を続けている。この「東京オーダーシューズ普及促進会」が主催の「東京オーダーシューズ普及促進会展示会」が1月31日と2月1日の2日間にわたって東京・入谷で開催された。展示会に参加したのは、自身で工房を持って革靴をオーダーで作っている7人の職人さん。
靴を自分の足に合わせてオーダーで作ってもらうことが日本ではあまり浸透していない。どこで、どうやって自分の好みに合うオーダー靴に出会うか。その一歩目を踏み出すことさえ、なかなかハードルは高いと言えるだろう。職人さんがどんな人で、どんな思いを持って、どんな靴を作っているのか。それを知ることができたのが、職人さんが一堂に集っている今回の展示会だった。
革靴市場においては、プレミアム消費へのシフトが進んでいる。手頃な価格で短い期間に履き替えるのではなく、気に入ったものを長く使う。展示会では足型測定も無料で行われ、どんなサイズの靴を選んでいいのかもアドバイスしてくれた。左右の足が同じサイズという人はほとんどいないという。左右で5ミリ以上違う人も、決して少なくない。
ひと口にオーダー革靴と言っても、千差万別で、コンセプトもデザインも素材七人七様。同じなのは「一生付き合うことのできる靴を、ひとりひとりのために大切に作る」ということ。足の計測にはじまり、サイズだけではない細かいチェックを経て、その人のための靴が生まれる。「完成までに何度も工房に足を運んでもらうことになる」と、どの職人さんも語ってくれた。また今回の展示会に関しては、「いろんな工房の職人さんが、自分の靴を持って、同じ場所にいる。そのことが勉強や刺激になったし、いろんな工房があるからこそ、いつもは出会えないようなお客さんと話すことができて、それもいい時間でした」と異口同音に話してくれた。
自分の足のためだけに作ってもらう、世界でただひとつの革靴。それは決して選ばれた人のものだったり夢のようなものではなく、誰もが手にできるもっと身近にあるものということも教えてもらえた展示会だった。