国立大学法人・京都大学(山極寿一学長)が3月28日、同校のサイトの中で『京都大学における軍事研究に関する基本方針』なる記事を掲載し、「本学における研究活動は、社会の安寧と人類の幸福、平和へ貢献することを目的とするものであり、それらを脅かすことに繋がる軍事研究は、これを行わないこととします」という宣言を行った。このニュースを伝えた『東京新聞』によれば、天下の京都大学が軍事研究に否定的な考えを見せたことで、他の大学にも影響する可能性があるとしている。
いかにも、自由と調和を校風とする京都大学らしい宣言である。だが、この尤もらしい文言に対し、ネット上では「北朝鮮の核はOKなのかよ」などと、厳しい非難が集まっている。というのも、じつは京大・原子炉実験所には、日本政府から対北朝鮮制裁として「再入国禁止措置」の対象となった准教授が現在も勤務しているからである。
『新潮45』(17年3月号/新潮社)によれば、16年2月、日本政府・法務省は朝鮮総連幹部やその傘下の在日本朝鮮人科学技術協会の協会員ら22名を対象に、北朝鮮へ渡航したら日本には戻れない「再入国禁止」の措置をとっている。その内の5名は科学者で、日本の国立大学に籍をおいた経歴を持つのだという。2人は東大生産技術研究所にいたエンジン技術の専門家、そして3人は原子力関係の研究者。その1人P氏は、いまも京大の原子炉実験所に在籍する現役の准教授だったのだ。
■北との関係が深い核研究者が、拉致事件の責任者の娘と結婚!?
P准教授は「訪朝経験」こそ無いというが、経歴には訝しい面も多い。同氏は神奈川県・川崎市に生まれ、登録上は韓国籍。95年に名古屋大学を経て、02年から京大の同実験所の助手となり、その後、准教授となっている。専門は原子力学で、国際原子力機関(IAEA)の共同研究にも加わる優秀な学者だったという。
だが、同時に北朝鮮とも繋がりが深く、警視庁公安部から家宅捜索も受けた「金万有科学振興会」から核研究で奨励金をもらっていたことが判明している。そして、98年、Pは在日韓国人の女性と結婚しているのだが、この女性の父親はなんと兵庫県・神戸市のラーメン店員・田中実さんの拉致を行った「洛東江」という工作機関の責任者だったのだ。
16年5月2日の『産經新聞』によれば、京大・同実験所は准教授に対し、同年4月に事情聴取を行っているようだ。准教授は法務省から「再入国禁止措置」を受けたことは認めているが、北朝鮮への渡航歴は無いとし、措置の理由も心当たりがないと話したいう。京大はこれで「お咎めなし」と判断したのか、特段この件について説明することもなく、18年3月現在も「京都大学教育研究活動データベース」にはP氏の名前が掲載されている。
もちろん、P准教授から核開発の情報が漏れたかどうかは不明である。我が国にはスパイ防止法もない。しかし、北朝鮮が日本の国立大学の原子力とミサイル技術研究に狙いをつけていたことは間違いないだろう。もし、国民の血税がつぎ込まれた国立大学の研究が、北朝鮮が兵器開発に一役買っていたとしたら…。少なくとも京大には納得する説明をする義務があるのではないか。
筆者には「社会の安寧と人類の幸福、平和へ貢献する」という美しい文言を、警察白書で「極左暴力集団」と名指しされる中核派を学生寮の中に抱え込んでしまう京大の”おおらかさ”として看過することは出来ない。