行き過ぎた人権配慮が文化を奪い、住みづらい街を作ってはいないか。千葉市が市職員や教職員に向けて「性別を決めつける言動」をさけるよう、18年度の対応指針を策定したと、5日配信のNHKニュースが伝えた。
物議を呼んだのは、その中に「夫」や「妻」という表現は「配偶者」や「パートナー」に、また「お父さん」と「お母さん」も「保護者の方」とか「ご家族の方」という言葉に言いかえるよう求める、との方針が見られたからだ。
千葉市の判断の背景には、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど性的少数者)の人たちへの差別をなくそうという配慮がある。同市では16年にも全国の自治体で初めて、LGBTの職員に対し「結婚休暇」に相当する「パートナー休暇」を認める取り組みを行い、「多様性のある社会」を目指していると評価を集めている。だが、さすがに今回の指針には「やりすぎではないか」とする意見も多い。
ソーシャルメディア上でも「人権も大事だが、”お父さん”や”お母さん”をあえて使わないなんて文化破壊じゃない?」「マイノリティ配慮もやりすぎれば、ギスギスした世の中になる。本末転倒だよ」「不自然すぎる言葉使い。『父』『母』という語感から子供が発想するイメージを奪ってる。保護者なんて、個性を殺す何の面白みのない言葉だよ」などと、違和感を持つ声が続出した。
タレントのフィフィ(42)もTwitterで「差別的意味合いもないのに言葉狩りしてその結果、窮屈な社会にしてないか? そもそも妻とかお父さん等と呼ばれたい人達の自由は奪ってもいいのか?」と懐疑的なコメントを述べていた。
■家族制度が気に食わない、LGBTをネタに商売する人たちも?
また掲示板で多く見られたのは「日本の伝統的な家族制度が嫌いな」人たちがLGBTをネタにして、声高にクレームをつけているのではないかと懸念する保守層の声だ。前出のフィフィも「そもそも本当にLGBTの方々がそれを望んだの?」とつぶやいているが、この千葉市の判断が、本当にLGBTの人が望んでいるのかは疑わしいところである。
5日発売の週刊新潮(新潮社)では「『LGBT』ビジネスの不都合な真実」と題し、同性愛研究家のジャック・K氏が「反権力が権力者に豹変する」さまを伝えている。ゲイである同氏は、LGBTについて「当事者の1人であるにもかかわらず、この言葉遣いはとにかくピンとこない」といい、それはこの言葉がLGBT活動家が作り上げた「バーチャルな概念」だからだと説明する。
たとえばLGBT活動家らは「LGBTがトイレで困ってる」と主張し、メーカーと組んで企業や自治体にLGBT専用のトイレを作るよう働きかけているという。その結果、ドン・キホーテや丸井デパート、公共施設などで導入されたが、同氏によればトイレで困っているのは一部のトランスジェンダーだけで、ゲイやレズビアン、バイセクシャルはまったく関係ないと主張。実際、四国のある中学でもLGBTトイレを作ってはみたが、結局利用する生徒が1人もいない「税金の無駄遣い」としか言いようのない事例も紹介されている。
ジャック・K氏によれば、いまや、かのゲイパレードも左派陣営が入り込み、スローガンを書いたプラカードが林立し、左翼デモのようになっているという。同氏が「カワイソーな弱者」扱いされる現状を「侮辱を感じずにはいられない」と語っていたのが印象的だった。マイノリティあるところにビジネスあり……とは言わないが、当の弱者らの声がそれを食い物にする人たちの大声にかき消されている現実は悲しいばかりである。
Participants march at the Pride Parade in Tokyo August 14, 2010. The march was held to aim at making Japanese society more understanding towards the country's gay, lesbian and transsexual communities. REUTERS/Kim Kyung-Hoon (JAPAN - Tags: SOCIETY)