■財務省の政権内影響力が低下で増税阻止につながるか

ところで文書改ざん問題などを契機にして財務省の改革の必要性が言われている。一部では話を大きくして省庁改革という声もあるが、話が大きくなると財務省の責任があやふやになるだけである。土居丈朗慶應大学教授は、時事通信の記事中コメントで、「今回の体たらくで、財務省の主張が政権内でまともに扱われない可能性が出てきた」としている。

土居氏は財政再建のために消費税増税を積極的に進めようとしているので危機感があるのだろう。消費増税の旗振りを積極的にしているのは、財務省がその中心であることは誰でもわかることだろう。消費税増税に関しては、土居氏の危機感を現実のものにすることが、私にはいまの日本経済にとっていいことだと思っている。

もちろん問題はある。ひとつは、消費増税停止・廃止などが、かならずしも今回の文書改ざん問題や「セクハラ疑惑」と結びついていないからだ。簡単にいえば問題が違う。また力技で、財務省の政治力を抑制しながら、一気に消費税停止・廃止をするだけの問題意識をもった政治勢力も必要になってくる。いまの安倍首相も現時点では消費増税をする方針に変更はないようだ。ただし安倍首相には過去二回の消費税先送りの「実績」がある。それ以外の自民党の総裁レールの「候補」たちは軒並み増税派である。

いずれにせよ、現段階で、消費税増税の停止・廃止は、世論のごく一部の願望にしかすぎない。財務省の超権力を抑制するには、同省の最大の政策である財政再建という美名の増税路線をたたくことが最も効果的だと思っている。その意味でももっと世論がこの機会に、財務省の超権力を批判的に見つめ、財務省の増税路線と厳しく面することを望みたい。

【追記】脱稿後、セクハラ被害をうけた女性記者がテレビ朝日の職員だという、テレビ朝日の記者会見が行われた。

「録音、自らを守るため」次官セクハラ問題、テレ朝会見(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASL4M014NL4LUTIL06W.html?iref=comtop_8_01

テレビ朝日の記者会見を見たかぎりでは、セクハラの疑いが極めて高い事例のように思われる。と同時に、この事案が取材受けるという業務の中で行われたことを、財務省側は深刻に受け取る必要がある。さらに、テレビ朝日側は女性記者からの告発を無視していた実態も明らかになっている。日本の取材現場が、官僚の顔色を窺って成立している側面がこの問題の背景にあるのだろう。また「官庁の中の官庁」といわれる財務省のパワハラ的風土、ブラック企業的風土は以前からも指摘されていた。

日本を代表するエリートが集るという「美名」や、またハードな職場環境を誇る体質なども人を人として扱わない問題の隠ぺいに貢献してきたのかもしれない。その延長には、セクハラ、パワハラだけではなく、本論で書いたように日本の経済、日本国民の生活を「財政再建」という「美名」で抑圧し、押し殺す、エリートたちの歪んだ意識があるともいえないだろうか。

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