ロンドン中心部、テムズ河北岸に広がる行政区「シティ・オブ・ロンドン(City of London)」には、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(Bank of England)やロンドン証券取引所(London Stock Exchange)をはじめとする金融機関や、各国の商社などが多数オフィスを構えています。

通常単に「シティ」と呼ばれているこの一帯は、ロンドンの起源となる地域である古いエリアでもあり、歴史ある建物と高層ビルが混在し、街のいたる所にさまざまなモニュメントを発見することができる、街歩きが楽しい場所でもあります。

そんなシティの近代的なビルとレンガ造りの建物に囲まれた空間にひっそりと佇んでいるのが、今回ご紹介する「セント・ダンスタン・イン・ザ・イースト(St Dunstan in the East)」。

ここはシティ・オブ・ロンドンが管理する、教会の廃墟を再生させた庭園で、シティで働く人々やロンドン市民の憩いの場となっています。

かつてはステンドグラスが輝きを放っていただあろうアーチ型の窓枠が連なる石造りの壁にツタが絡まる様は、侘しさを併せ持つ美しさ。

この独特な風景を求め、廃墟ファンやインスタグラマーが日々訪れ、人気バンドのミュージック・ビデオの撮影地としても使用されています。

オリジナルの建物は1100年頃には建てられていたという非常に古いこの教会は、1666年に発生した未曾有の大火災「ロンドン大火(The Great Fire of London)」により、深刻な被害を受けました。

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