米著名投資家のジョージ・ソロスは、株式相場の高騰や下落といった社会現象には「可謬性」があると説いた。可謬性とは、哲学用語で「誤り(誤解)が生じうる」との意味合いを含む言葉である。

すべての人間は、世界を完全に理解することはできない。ソロスは、あらゆる人間が本当の現実を把握できておらず、把握できているのは常に現実の一部でしかないと捉えている。あらゆる人間が認識しているつもりの「現実」は、それぞれが、客観的な現実とは少しずつ異なる「現実」なのである。つまり、大勢の人間による誤解、すなわち「現実」の積み重ねが、社会の「現実」をも動かしてしまうのである。

ソロスは、現実から乖離し、差異が拡大していく「現実」が生まれる現象を「正のフィードバック」とし、現実へ近づき、差異が縮小していく「現実」が生まれることを「負のフィードバック」と位置づけた。そして、負のフィードバックは「現実」に近づくまで延々と繰り返されるが、正のフィードバックは永続的ではなく、いつか必ず負のフィードバックに切り替わると考えた。

つまり、市場を支配しているのは大勢の人間の心理であり、相場は常に上にも下にも振れることとなるのが当然の姿である。しかし、時間の経過とともに現実へと近づいていくことになるのだ。

(つづく~「仮想通貨のゆくえと日本経済vol.7仮想通貨の価値は、なぜ上がるのか【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)

◆フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成

【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。

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