米中貿易戦争、ついに第二弾になる160億ドルの追加関税が開始された。まず、米国は世界中の鉄鋼アルミに関税をかけ、そして、中国をターゲットとした500億ドルの産品に対する25%の関税を発表した。第一弾として、340億ドル、そして、今回の処置となったわけである。

また、現在、追加2000億ドルの産品に対する関税も用意しており、そのための公聴会が開かれている。関税以外にも、米国政府と米国政府と取引する企業に対して、中国通信機メーカーZTE、ファーウェイと中国セキュリティ企業との取引停止を決定した。

日本のメディアを見ていると、これはトランプ大統領の独善的な決定のように見えるが、実はトランプ大統領以上に議会が強硬であり、この決定は世論と議会の要請を受けて行っているものなのである。米国は、米国議会で、国防予算と国防計画を決める国防権限法(NDAA)を毎年議決している。

今年の国防権限法のサマリーに『中国共産党の政治的影響力、経済ツール、サイバー活動、世界のインフラと開発プロジェクト、米国と同盟国やパートナーに対する軍事活動に対処するための中国に対する全政府戦略を指示する。』という文言が組み込まれたのである。つまり、米国はすでに中国を敵国として認識しており、中国に対して米国の持つすべての力を使って対抗してゆくと宣言したわけだ。

その経済的ツールが関税であり、安全保障分野からの中国企業排除であるわけだ。今回の中国向け関税第一弾と第二弾であるが、そのターゲットは『中国製造2025』であり、中国がこれから発展させてゆくと宣言した分野であり、米国は関税によりこれを潰そうとしているわけである。

また、中国企業による米国投資に関する規制も強化され、対米外国投資委員会による審査の厳格化が始まった。これにより中国企業による米国企業の買収は困難になり、安全保障にかかわる部分の不動産の取得もほぼ不可能になった。さらに、一部で売却命令も出始めたわけである。

そして、ヒトの分野でも大きな変化が起きている。米国は留学生ビザを5年から1年に短縮し、中国人研究者の米国入国拒否を始めたわけだ。これは技術流出と産業スパイ防止を視野に入れたものであると言えよう。また、中国が米国の大学に設置した孔子学園の廃止も進められており、これも大学への中国の影響力排除を目的としたものである。

そして、これは政権だけでなく議会のコンセンサスによるところであるというところに大きな意味がある。つまり、政権が変わったとしても米国の方針は変わらず、より強化される可能性が高いといえるのである。軍事的衝突はないもののすでに米中は冷戦状態にあり、これが深まってゆく可能性が限りなく高いのである。

国家の責務は国民の生命安全財産を守ること、だからこそ、安全保障はすべてに優先し、経済は安全保障のための道具の一つに過ぎない。これを最も理解しているのが米国であり、理解できていないのが平和ボケした日本の政財界なのかもしれない。しかし、それは巻き込まれによる日本の被害の拡大を招くことになる可能性が高い。