海岸公園を西へと進んでいくと、大通りを挟んだ向かい側に、伝統的な町並みを残す旧市街が見えてきます。

「内城」を意味する「イチェリ・シェへル」と呼ばれる旧市街は、周囲を重厚な城壁に囲まれた城塞都市。現在も、旧市街を取り巻く180度ほどの城壁が残されており、2000年には「城壁都市バクー、シルヴァンシャー宮殿、及び乙女の塔」として、歴史ある町並みがまるごと世界遺産に登録されました。

真っ先に目に飛び込んでくるのが、バクー旧市街の象徴的建造物である「乙女の塔」。もともとこの場所には紀元前に拝火教寺院があったといわれ、現在の塔は要塞として12世紀に建てられたものです。

高さ30メートル、外壁の厚みが4~5メートルもあるという塔は、その名前に似合わず重厚感たっぷり。真相は定かではありませんが、「乙女の塔」というネーミングの背景は、望まぬ結婚を強要された娘がここからカスピ海に身を投げたことに由来するという説もあります。

現在、カスピ海は大通りと海岸公園を隔てたところにありますが、かつてはこのあたりまで水があったことが明らかになっています。塔の上は展望台になっており、ここからのバクー市街とカスピ海の眺めは一見の価値あり。

旧市街には、シルヴァン王朝時代の宮殿「シルヴァンシャー宮殿」や、モスク、ハマム(浴場)、キャラバンサライ(隊商宿)などの歴史的建造物がひしめき合い、近未来都市のイメージからはかけ離れた町並みが広がっています。

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