もし、ブロックチェーン上のトランザクションでイレギュラーな動きがあれば、AI(人工知能)で自動的に検知することも可能になります。これは、アンチ・マネーロンダリングの方針にとっても有効です。規制当局にとっても、コントロールが簡便で、監視の人員を削減できる仕組みといえるのではないでしょうか。仮にトークンエコノミーに対して規制を入れるにしても、やみくもに厳格化するのでなく、分散型モデルに適した規制のあり方を探ることが、これからの日本経済の発展にも資すると思うのです。

■クリスさんは別分野から金融の世界へ参入し、さらにブロックチェーン事業の支援に関わっていらっしゃいますが、金融の世界でブロックチェーン事業のようなリアルビジネスが注目されているのでしょうか。

注目されているだけでなく、金融業界にいた人がブロックチェーン関連ビジネスへ参入する動きが増えています。金融はスケーラビリティの大きさが魅力で、運用によって投じた資金が何倍にも増えていきます。ビジネスでは、「ゼロから1」を立ち上げ、「1から2」へ持っていき、黒字化させていくまでが大変です。事業を軌道に乗せて拡大させていくためには様々な先行投資が必要ですし、従業員も増やしていかなければなりません。一方、金融なら「1から10」へ増やすことは決して難しくありません。仕組みを構築すれば、100にも1000にもできます。

そして、トークンエコノミーをリアルビジネスに組み入れれば、金融の「1を10にできる」スケーラビリティの高さを、ビジネスにも取り込むことができるかもしれません。金融業界からブロックチェーン事業に参入する人が増えているのも、おそらくその可能性を敏感に察しての動きだと私は考えています。

(つづく~「LONGHASH Japan代表 クリス・ダイ氏インタビューvol.4 分散型ビジネスによる変化【フィスコ 株・企業報】」~)

【クリス・ダイProfile】
中国上海出身。LONGHASH Japan代表取締役社長。中国と日本のクロスボーダー投資ファンドLeland Capitalの共同創設者兼CEO。中国と日本での活動を中心に、幅広いビジネスマネジメントと投資を行い、COO/CIO Yixing SCM(ロジスティクス・プロバイダー)、Accentureのコンサルタント、複数のベンチャー企業の共同設立者。中国のビットコインとイーサリアムの早期の投資家の一人で、2013年から仮想通貨投資に携わる。経済産業研究所ブロックチェーン研究会委員。2004年にスタンフォード大学でマネジメントと科学と工業工学卒業。

  • 1
  • 2