※この記事は、『中国が築くブロックチェーンの「ファイアウォール」その1』の続きです
中国の規制当局は、ブロックチェーンの技術を本当には理解していないようだ。とはいえ、政府は十分な調査を行ったうえで提案している。実際、法案の内容は、より広範な情報規制戦略に従っている。すなわち、すべてのデータは国家の管理下に置かれ、民間企業は必要な認可を取得し、顧客の個人情報を所定の手続きで管理しなければならないのだ。これらの原則に違反したサービスやシステムは違法と見なされ、禁止される。
「その1」でもいくつかの条項をご紹介したが、ここでは情報に関連するものを挙げる。
第18条:第9条の、法律や規則で禁止されている情報やコンテンツの生産、再生産、発表、配布に関する規定に違反したブロックチェーンの情報サービスの提供業者は、警告を受けて、法律が定める期限内に是正しなければならない。状況が深刻すぎて是正できない場合や、サービスの提供業者が是正を拒否した場合は、サービスの一時停止と5000~3万人民元の罰金を科され、関連機関が法律にのっとって当該サービスを終了させる。犯罪にあたる場合、サービスの提供業者は刑事責任を負う。
この条項は、中国で禁止されている情報の生産、再生産、発表、配布が処罰の対象となることを、あらためて強調している。ただし、ビットコインやイーサリアムなどブロックチェーンのプラットフォームにおいて、情報の書き込みや配布を阻止できる個人や組織はいない。一方で今回の規制は、パブリックチェーンのプラットフォームの発展と利用そのものを禁止する法的根拠となり得る。
その結果、中国でマイニングを行う人々は、より深刻な法的リスクに直面する恐れがある。あるパブリックチェーンが中国で禁止されている情報を広めているとみなされた場合、マイナーはブロックチェーンに書き込まれた情報を管理する権限がないにもかかわらず、コンテンツの生産と配布の法的責任を問われかねないのだ。政府がこの条項を厳格に適用すれば、中国のパブリック型ブロックチェーンからマイナーがいなくなって、コンピュータの計算能力の世界的な分布図が大きく変わるかもしれない。
言い換えれば、中国を拠点とする大手マイニング企業にとって、今回の規制は良い知らせではない。とくに世界最大手の1つ、ビットメインのマイニングプールとBCH(ビットコインキャッシュ)は大きな痛手を受けるかもしれない。ビットメインは中国に拠点を置くうまみがなくなるだろう。
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