STOは、一種のハッピーな媒体のように見えるかもしれない。ブロックチェーン・プロジェクトと投資家のどちらにとっても、IPOより参入障壁が大幅に低く、その基準はICOよりはるかに高い。というのも、ICOトークンは誰でも作って、大衆の売りつけることができるか。STOが素晴らしいもののような気がしても無理はない。

だが、実際は違う。STOはブロックチェーン技術の肝心なポイント、すなわち分散型の性質を傷つける。トークン発行から規制まで、STOのプロセスのほぼすべては、まとまった一カ所で行われなければならない。

分散型システムに有力な中心的ノードがある場合、STOは名前だけ立派だけ中身を伴わないものになる。それに、既存の証券発行プラットフォームを真似るなら、ブロックチェーン・プラットフォームを使おうとする理由がわからない。結局のところ、ナスダックやニューヨーク証券取引所など、完全に有効な機能的証券プラットフォームはすでに存在するのだ。それよりも効率が悪い類似プラなど必要ないだろう。

ある意味でSTOは、ヨーロッパとアメリカの規制当局が規制するブロックチェーン・プロジェクトの勧誘キャンペーンとみなすことができる。だが、このキャンペーンも最終的には失敗に終わる可能性がある。結局のところ、ファックスはメールではないし、ブロックチェーン上の資産は証券ではないからだ。

規制とオペレーションを中央集権化しようとする分散型システムは、それ自体に矛盾を抱えることになる。ブロックチェーンをユニークでパワフルな技術にしているのは、その分散型の性質だ。それが取り除かれたら、もはやブロックチェーンは非効率的なデータベースにすぎない。

現在の多くの若者たちは、ファックスが何なのか知らないし、ファックス機を見たことがない若者もいるだろう。いまやインターネットがファックス技術の延長ではないこと、そしてメールとファックスの性質が異なることは、誰にとっても明白だ。インターネットは効率性と機能の両面において、ファックスの概念をはるかに超えている。

とはいえ、かつてWinFaxが一定の役割を果たしたことは認めなければならない。WinFaxは、人々が快適だと感じる形でインターネットを使うことを可能にすることで、コンピューターを導入し、ウェブを使ってみようかと考える会社を増やした可能性がある。それはインターネットを普及させる重要なステップの1つだったとも言える。

仮想通貨がより幅広く採用されるようになるためには、適切な規制が必要なのは間違いない。だが、その答えはSTOではないだろう。ブロックチェーン技術は、独自のユニークな特徴と発展の道を持つから、それに沿った規制が必要だ。

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