トルコ最大の都市イスタンブールの新市街にはタクシム広場やイスティクラル通りなどの賑やかな観光名所が目立ちます。
歩行者天国になっているイスティクラル通りでショッピングやカフェタイムを楽しみ、緩やかな坂を下ってガラタ塔まで歩き、ガラタ塔に登ってイスタンブールの大パノラマを堪能する、というのはもはやイスタンブール観光の王道コース。
あまり知られていませんが、旅行者を楽しませてくれる要素たっぷりのこの新市街には、実はオスマン帝国時代の海軍の大提督が眠っているモスクがあるのです。
しかも、このモスクの設計を手がけたのはトルコ史上最高の建築家といわれるミマール・スィナン、訪れない手はありません。
大提督の名に因んで、モスクは「クルチ・アリ・パシャ・モスク」と呼ばれています。
彼は1519年に南イタリアで生まれましたが、1536年オスマン帝国の提督バルバロス・ハイレッディン率いる私掠船に捕縛され、1538年、かの有名なプレヴェザの海戦に参加しました。その後ムスリムに改宗し、捕縛された奴隷という身分ながらも徐々に頭角を現していきます。
オスマン帝国海軍の将(レイース)、オスマン帝国領アルジェの総督(ベイレルベイ)と実績を積み、1571年にはついにオスマン帝国海軍の大提督(カプタン・パシャ)という身分にまで上り詰め、1587年にその生涯を閉じるまで任務を全うしたのです。
海軍の大提督らしく、彼のモスクはボスポラス海峡を間近に感じることができるトプハーネに建てられています。彼と仲が悪かった当時の大宰相リュステム・パシャがミマール・スィナンに「海軍提督なんだから海の上にモスクを建てろ。」と言ったため、この場所を選んだともいわれています。
モスク内部は、美しいタイルやアラビア文字のカリグラフィーが素晴らしい空間。大提督を思わせる、男性的な強い印象を受けるモスクです。小窓からはボスポラス海峡から太陽の光が優しく差し込み、それはまるで彼の魂を癒しているかのようです。
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