ヨーロッパ最大のチャイナタウンやコベント・ガーデン、劇場や映画館が集まるロンドン中心部の「ウェスト・エンド」。この賑やかな娯楽地区の一角に、古書や切手などを扱う店が並ぶ通り「セシル・コート(Cecil Court)」が存在します。

賑やかな大通りを外れ、セシル・コートに一歩足を踏み入れると、貴重な初版本やコレクターズ・アイテム、子供向け、音楽系、アジア系などの各種古書店、古地図、古いポスターや古書の美しいイラストページなどを一枚ずつ販売するプリント店、額装店、アンティークショップなどが立ち並び、歴史を感じさせられながらも、宝物が見つかりそうなワクワク感に包まれます。

現在のような古書店街になる前の同地は、イギリスの初期の映画産業の中心地でした。1897年に最初の映画制作会社がオープンすると、撮影機器店、道具のレンタル会社、外国の映画会社などが次々と店舗や事務所を構え、当時は「フリッカー・アリー(Flicker Alley、フリッカーとは映画などの画面のちらつきを意味し、アリーは路地)」の愛称で呼ばれていました。

その後第一次世界大戦前頃になると、古書店や出版社が集まるようになり、やがて現在のような古書店街へと変貌していきました。多くの店の店構えは100年前の姿とほぼ変わらないのだそうです。

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