クチトンネルでは、ここにやってきた米兵を撃退する恐ろしい罠も仕掛けられていました。これは「ブービートラップ」といわれるもので、布と枯れ葉で隠した穴の上に踏み込むと、毒が塗られた針の上に落ちてしまうというものです。
兵力ではとても敵わないものの、解放戦線の兵士たちは、頭を使ってアメリカ軍と戦っていたのです。
ベトナム人の賢さは、兵士たちが履いていたサンダルにも表れています。黒いサンダルは、タイヤでできたもの。物資の補給が十分ではなかったために、古いタイヤをリサイクルしてサンダルを造り、しかも自分たちの足跡をわからないようにするために、前後を逆にして履いていたというのです。
使えるものは何でも使おうと、米軍の不発弾を利用した地雷も造っていました。
どんな戦争であれ、それが人の命を奪うものである以上、戦争そのものを美化することはできません。
しかし、兵力や物資の面で圧倒的に劣っていたはずの解放戦線がアメリカに打ち砕かれることがなかったのは、「自分たちの国を守る」という強い意志と、ハンデを跳ね返す知恵があったからこそ。そのことには、素直に敬意を表したいと思いました。クチトンネルはまさに、ベトナム人の知恵と忍耐の象徴といえるでしょう。
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