米8月14日、ニューヨーク株式相場が大幅に反落する中、金先物は反発した。米中貿易摩擦をはじめとする世界情勢の悪化が懸念される中、金現物相場も急伸を続けており、安全資産としての金の価値が再確認される形となった。

一方、ビットコインをはじめとする仮想通貨相場は、急激な下落に見舞われ、資産の逃避先=デジタルゴールド=資産の逃避先としてビットコインの地位が確立する日が、先延ばしになった印象は否めない。

なお、一部の有識者はビットコインが規模の大きいグローバル経済においては、いわゆる安全資産性を発揮することが難しいとも指摘している。

一方、香港やアルゼンチンといった、政情不安がより顕著な地域では、事情は異なるようだ。

まず、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例 」改正案を巡る抗議活動が、ますますエスカレートし混乱の続く香港では、ビットコインが約4%のプレミアムで取引されていると、14日米メディアのBloombergが報じた。

また、ビットコインのP2P取引サイトLocalBitcoinsのデータによると、香港における15日執筆時の希望売値には、176米ドルから596米ドル(1.7%から5.8%)のプレミアムをつけてリストされている。

このような『香港プレミアム』は、デモが地元警察によって強制排除される始めた6月から観測されている。6月のロイターの報道によると、法案が可決された場合(現在:法案が廃止された)、中国本土の裁判所が、本土で行われた犯罪に関連する資産を凍結し押収するよう、香港の裁判所に要請することができるため、一部の香港の富裕層は、資本をシンガポールなど海外へ逃避させ始めているという。その手段の一つとして、ビットコインが利用される可能性もあったという。

そして10週間にわたり反政府デモの続く香港では連日の空港占拠および抗議活動による欠航・機能不全の状態は14日より、改善が見られている。しかし、抗議の行方や中国政府の今後の対応における不透明な点が未だ多い。

アルゼンチンでは、11日に実施された大統領予備選挙において、野党左派のアルベルト・フェルナンデス元首相が、現職のマウリシオ・マクリ大統領に大差をつけ首位となったことで、金融政策の先行きに不安が広がり、同国資産が急落する中、通貨アルゼンチンペソは、中央銀行の為替介入にも関わらず、一時36%急落、過去最安値を更新した。

米ロサンゼルスを拠点とする仮想通貨ヘッジファンドArca 最高経営責任者のRayne Steinberg氏は、極端な通貨安と政情が不透明な状況において、ビットコインが、最後の砦となりつつあるとして、次のように述べている。

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