クラウド会計ソフトで知られるfreee(フリー)が東証マザーズへの上場を果たした。その日、12月17日(火)には東京証券取引所での上場セレモニー、そして上場および戦略に関する記者会見も行われた。
社員たちが楽しげに見守った記念の打鐘
上場セレモニーでは、まずfreeeの佐々木大輔CEOに上場通知書と打鐘用の槌が手渡された。続いて、上場記念の打鐘。最初は佐々木CEOと横路隆CTOが2人で鐘を打ち、その後は同社の役員や社員が続き、五穀豊穣にちなんで合計5回、鐘が鳴らされた。
注目の企業の株式上場ということで多くの取材陣が集まっていたが、打鐘はカラフルなおそろいの会社のTシャツを着たfreeeの社員たちも見守っていた。社員たちのにぎやかで楽しげな様子からは、freeeの社風がうかがえた。
実家の美容院でバックオフィス業務の大変さを痛感
上場セレモニー後には、会場を移して「freee上場および戦略に関する記者会見」が開かれた。佐々木CEOからfreeeが何を行ない、何を目指しているかについての説明が行われたが、まず語られたのは佐々木CEO個人のバックグラウンドだった。
佐々木CEOが生まれ育った実家は、東京の下町の小さな美容院だった。美容院を始めた祖父の仕事のことを誇りに思っていたが、同時に大変さも身近に感じたという。美容院では営業が終わると夜遅くまでその日の売上を集計し、月末には従業員の給与の計算のために多くの時間をかけなければならなかったのだ。
自営業や中小企業などのスモールビジネスは本業だけでも大変なのに、経理や給与計算などのバックオフィス業務に労力を割かれてしまうことを痛感。この問題を解決することを目標に2012年にfreeeを創業して、バックオフィス業務をスムーズに行なうための「クラウド会計ソフト freee」をリリースした。
「スモールビジネスを、世界の主役に。」という理想をかかげるfreeeは、スモールビジネスを行なう人々がやりたいことに集中するため、ソフトにまかせられる作業はソフトにまかせるクラウド会計ソフトを開発したのだ。
労働人口の減少、最低賃金の上昇、起業の増加、副業の増加といった国内環境もfreeeにとっての追い風になっているという。クラウド会計ソフトが諸外国に比べて日本ではまだまだ浸透していないことも、freeeにとっての伸びしろの要素になるとも語った。
大企業依存型だった社会が変わっていく
佐々木CEOのプレゼンテーションに続いて、東後澄人CFOも加わって質疑応答が行われた。この中でfreeeを後押しする、副業する人が増えている傾向について聞かれた佐々木CEOは、「今まで大企業依存型であった社会が、もっと個人というものに焦点を当てて、自由な生き方をしていける環境を作っていく第一歩として、副業という(社会的な)動きはすごく面白いんじゃないかと思っています」と答えた。「世の中を前にすすめる組織」と謳うfreeeのCEOらしさが感じられる回答だった。
この日の市場ではfreeeには買い注文が殺到し、初値は公開価格2000円を25%上回る2500円、終値は公開価格を35%上回る2700円となり、時価総額は1200億円を超えた。投資家の同社に寄せる期待が数字となってハッキリと表れたと言えそうだ。