夜のパリで生きる女性の美しさや華やかさを描いた、世界に名だたるポスター画家の1人といえばロートレック。

パリでの活躍が有名なロートレックですが、故郷は赤いレンガの建物が美しい南フランスのアルビ。

1968年、そのアルビにあるロートレック美術館から、京都国立近代美術館に貸し出されていた「マルセル」という絵画が盗まれてしまいました。

「マルセル」といえば、美しい女性の普段着の姿が魅力的な、ロートレックのあふれる才能を感じられる作品の1つ。

もちろん、当時もロートレックは世界的にも有名な画家のため、日本側は外交力を駆使してどうにか門外秘出の名画を借り受けた、という状況でした。

それゆえ非常に大きなニュースになり、新聞の1面にも取り上げられるほどでした。

必死の捜索活動の甲斐もむなしく、発生から7年後の1975年12月27日、「マルセル」は発見されることなく時効を迎えてしまいます。

下火になっていた「マルセル」に関する報道がふたたび脚光を浴びたのが時効成立後の1976年1月でした。

京都でなくなった「マルセル」が大阪の会社員夫婦の自宅で見つかったのです。

当時は時効成立後で十分な捜査ができなかったため、犯人や動機が不明のまま、その年の2月27日に「マルセル」はロートレック美術館に戻りました。

貸し出されていない期間なら、もちろん今でも、アルビのロートレック美術館で鑑賞することができます。

日本で盗まれて日本で発見された名画をフランスで鑑賞してみてはいかがでしょうか。

名称 ロートレック美術館
所在地 Palais de la Berbie, Place Sainte-Cécile, 81000 Albi,France
公式ホームページ https://jp.france.fr/ja/occitanie-sud-de-france/article/39851

3. ナチスに盗まれた市場価格100億円を超えるクリムトの傑作「黄金のアデーレ」

オーストリアでナチスに盗まれた、現在の価格で100億円以上とも言われる「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」、通称「黄金のアデーレ」。

次ページ