このグスタフ・クリムトの代表的な絵画は、黄金に包まれた美しい女性の肖像で、その美しさから「オーストリアのモナ・リザ」とも賞賛されています。

この絵が生まれたのは1907年。

ウィーンのユダヤ系実業家のフェルディナント・ブロッホ=バウアーの注文により、妻アデーレをモデルにクリムトが3年の年月をかけて描いた絵画は、絵画技法に工芸技術を組み合わせることで従来の絵画表現にはない世界観を作り出した傑作でした。

1925年に亡くなったアデーレは、この絵をオーストリア政府が経営するベルヴェデーレ宮殿美術館に寄贈するよう遺言を残しました。しかし、夫のフェルディナントは妻の絵を手放すことを望まず、遺言を無視してそのまま持ち続けます。

その後、1938年にナチスがオーストリアを併合したことで、ユダヤ系のフェルディナントはスイスへ亡命、その際に「黄金のアデーレ」を含めたフェルディナントの財産は全てナチスに没収されてしまいます。

第二次世界大戦後、「黄金のアデーレ」を含む財産はフェルディナントの元に返却されることになりましたが、その返却の手続きが正式に終わる前に、彼は亡命先のスイスで亡くなってしまいます。

オーストリア政府は、アデーレの遺言のとおり、「黄金のアデーレ」をベルヴェデーレ宮殿美術館に収蔵してしまいましたが、ここにも問題が発生してしまいます。

実はアデーレの夫フェルディナントの遺言書には「アデーレの絵は姪のマリアに譲る」と記されていました。そのため「黄金のアデーレ」の所有権は2006年まで法廷で争われました。

最終的にマリアはその所有権を勝ち取り、その後、エスティローダー社のロナルド・ローダーに売却、現在はニューヨークのノイエ・ガレリエに展示されています。

名称 ベルヴェデーレ宮殿
所在地 1030 Vienna, Austria
公式ホームページ https://www.belvedere.at/en
※ベルヴェデーレ宮殿には「黄金のアデーレ」と並び称されるグスタフ・クリムトの「接吻」が展示されています。

4. ルーヴル美術館に不在のモナリザ

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