南ドイツの人気都市ハイデルベルク。風光明媚な旧市街の街並みやフランクフルトから電車で1時間というアクセスの良さが魅力となり、世界中から多くの旅行者が訪れる町です。

歴史をたたえる町並みのほか、ハイデルベルクはドイツ最古の大学がある町としても有名。ハイデルベルク大学はドイツがまだ神聖ローマ帝国だった1386年、この地を治めていたプファルツ選帝侯ルプレヒト1世によって設立されました。

町の各地にあるキャンパスには世界中から学生や研究者が集まるほか、大学の関係者には著名な研究者やノーベル賞受賞者も多数。教育や研究水準もすばらしく、まさに名実ともにヨーロッパを代表する名門大学なのです。

そんな「大学の町」ハイデルベルクらしい場所のひとつが、旧市街の中心にある「学生牢」。かつては罪を犯した学生が投獄されていた場所なのですが、中に入ってみると壁や天井にはアートな落書きだらけなのに気がつきます。

牢獄なのに、なぜこんなにも楽しそうな雰囲気なのでしょうか?今回はその謎を探ってみましょう。

中世以降には、多くの大学が自治権を持っていたヨーロッパ。罪を犯した学生たちは警察ではなく大学が定める法により裁かれ、どの町にも学生を投獄するための「学生牢」があったのだそうです。

それら牢獄のなかでも、特に有名なものがハイデルベルクの学生牢。1712年から1914年まで約200年にわたり使用され、騒ぎや喧嘩、泥酔して物を壊すなどの「軽い罪」を犯した学生たちが投獄されていました。

投獄されたといっても、それは学生たちにとって名誉なこと。ハイデルベルク大学の学生には、「卒業までにいちどは学生牢に入る」ことを目標にしていた人も多いのだとか。

壁や天井にびっしりある落書きは、ロウソクの煤で描かれたもの。「学生牢」という言葉からは想像できないような、楽しそうな雰囲気が伝わってきます。

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