2020年7月10日に「自筆証書遺言保管制度」が施行された。これは、法務局が自筆証書遺言を保管して遺言書の紛失や隠匿などを防ぎ、円滑な資産継承が行われることを目的とした制度である。
遺言サービスを提供してきた三井住友信託銀行も、新制度に対応したサービスを用意する予定。7月28日には、プレスを対象に遺言サービスに関する説明会をオンライン上で実施した。
そもそも自筆証書遺言とは、財産目録を除く全文を自筆(手書き)で書いた遺言書のことである。遺言には7つの方式があるが、自筆証書遺言はもっともシンプルなもので、費用もかからず、紙とペンと印鑑さえあれば自分で作成することが可能だ。
自筆証書遺言は「誰にも知られず作成できる」というメリットがあるが、裏を返すと、書いた人が亡くなった際に遺言を見つけてもらえないというリスクもある。遺言が見つかった場合でも、内容に不満を感じた人から改ざんされるリスクもある。
こうしたリスクを解消するのが、法務省における自筆証書遺言保管制度である。法務局が遺言書を保管することで、紛失や改ざんといった自筆証書遺言のデメリットが解消されるのだ。
遺言を作成する上でのリスク
新制度が始まったことで遺言作成のハードルが下がり、遺言作成者が若年化し、富裕層以外の幅広い層が遺言を作成すると、三井住友信託銀行は予測している。つまり、“誰もが遺言を書く時代”が到来するのである。
ただし、当然ながら遺言の作成と遺産相続には様々なリスクが含まれている。自筆証書遺言保管制度によって、自筆証書遺言の紛失や改ざんのリスクを防ぐことはできても、「遺言の内容は実現可能か?」「相続人の間で争いが起きないか?」といった問題は残る。
こうした問題も専門的なノウハウがあれば、対応が可能だ。長年にわたって三井住友信託銀行は、遺言信託を提供してきている。
多様なニーズに応えるサービス
遺言信託とは、遺言に関して生前の相談、内容のアドバイス、保管、執行までをトータルで行なうサービスである。遺言信託は公正証書遺言(公証人が公正証書として作成する遺言)を対象としているが、三井住友信託銀行では自筆証書遺言にも対応する用意を進めているという。
また、“誰もが遺言を書く時代”における多種多様なニーズに応えるため、WEBで相談を始められる「WEB遺言信託サービス」や、対象財産や遺言内容を限定することで費用を抑えた「スマートゆいごん」などのサービスも開始している。
自筆証書遺言保管制度によって遺言の作成者の層が拡大し、遺言に関するビジネスの裾野も大きく広がり始めている。三井住友信託銀行の取り組みは、その変化を見据えているのだ。