銀座に店を構える、寿司店「銀座 鮨 奈可久(なかひさ)」が評判を呼んでいる。多くの寿司店が並ぶ銀座において、その江戸前の見事な“仕事”がファンをつかんでいるのだ。

奈可久は、かつて銀座御三家のひとつと言われた名店「奈可田」の流れをくんでいる。奈可田から暖簾分けされた六本木の奈可久から、さらに暖簾分けされたのが、この銀座の奈可久なのだ。

銀座の奈可久は2018年12月にオープンした。店主の村上亀氏は、世田谷の寿司屋で3年、六本木の奈可久で16年腕を磨いた寿司職人。奈可田から六本木の奈可久へと続く江戸前の仕事をしっかりと受け継いでいる。

その仕事を実際に味わってみた。店で提供されるのは、「おまかせ」(税別19,500円~、1人前)と「にぎりのみ」(税別14,000円~、1人前)。今回、記者はおまかせをいただいた。

そのまま食べても美味しい旬の食材に手間暇をかける

おまかせでは、つまみから始まり、それに続いて寿司が出される。どれも旬の食材にこだわり、それらに江戸前の仕事がほどこされている。ここで言う仕事とは、煮たり、焼いたり、蒸したり、酢や昆布で締めたりする作業のことだ。

そのまま食べても充分に満足できる旬の食材に手間暇をかけることで、さらに美味しさを引き出しているのである。

たとえば、つまみで焼き物として出された太刀魚。身はふっくらとした焼き上がりで、焼くことで脂が甘味を増していた。

寿司ではマグロの赤身の漬けも印象に残った。漬けた後に時間をかけて寝かせて水分を抜くことで、旨味が凝縮されている。

車海老の黄身酢おぼろ漬けにも繊細な仕事がほどこされていた。炒った卵の黄身に酢を加えたおぼろを使ったもので、車海老の甘味が引き立っているのだ。

これら以外でも、出された全てのつまみと寿司において、素材のよさと、そのポテンシャルを高める仕事のすばらしさが味わえた。

お酒やデザート、器にもこだわる

店主・村上氏のこだわりは、それ以外の部分にも表れている。たとえば、お店で出される酒の「空(くう)」と「摩訶(まか)」は、愛知県の関谷醸造のもので、まだ東京で飲める店は少ない。今回のデザートのイチゴも、埼玉県秩父市の「あまりん」という新品種だった。知る人ぞ知る逸品を探し出して、提供しているのだ。

料理やお酒のための器も、店主・村上氏が選んだもの。たとえば、寿司を載せる四角い皿は、色合いは気に入ったものの求める形のものがなかったため、わざわざ特注で作ったのだとか。

料理はもちろんのこと、それ以外の部分もふくめて店内にはこだわりがギュッと詰められていた。「寿司は好きだけど、江戸前の仕事は味わったことがない」という人は、ぜひ一度、奈可久を訪問してほしい。寿司の新しい魅力に気づくはずだ。

銀座 鮨 奈可久

東京都中央区銀座7-4-5 銀座745ビル1F

TEL/03-5931-1155

営業時間/17:00~24:00

定休日/日曜日、祝日にあたる月曜日

公式ホームページ/https://www.ginzanakahisa.jp/jp/