【2022年8月29日 イスラマバード(パキスタン)/ジュネーブ 発】
モンスーンの時期にあるパキスタンでは、ここ数週間にわたり、100年来の記録を更新する降水量となり、過去30年の平均降水量の5倍以上の量の雨がパキスタン南部に降り続きました。このため、パキスタンの4州のうち3つの州(シンド州、バロチスタン州、パンジャブ州)で大規模な鉄砲水や浸水が発生しています。この洪水により、340万人の子どもを含む640万人が深刻な影響を受けています。
約20万戸の家屋が全壊し、45万戸が被害を受け、また、約1万8,000の学校が損壊しました。70万頭以上の家畜が死亡し、200万エーカーの作物が失われ、3,000km以上の道路が被害を受け、さらに145カ所の橋が喪失もしくは現在安全に渡れる状態ではありません。洪水による死者は1,000人を超え、死者数は増え続けています。
厳しい状況をさらに悪化させているのは、最も被害の大きかった66の地区の多くが、パキスタンで最も脆弱な地区であるということです。すでに高い栄養不良率、水と衛生設備へのアクセスの悪さ、就学率の低さ、その他さまざまなものを奪われている子どもたちが、家も学校も、そして飲み水さえなく、困窮し取り残されています。これらの地区のいくつかは、最近アフガニスタンの不安定な状況から逃れてきた40万人以上の難民の受け入れ先にもなっています。
ユニセフ(国連児童基金)は、被災した3つの州すべてに事務所を設置しています。政府、他の国連機関、NGOのパートナーとともに、手元にある資源と備蓄している物資を活用して、緊急かつ命を守る支援を行っており、すでに100万米ドル相当の緊急支援と物資を届けました。現在は、各分野において、以下のような対応を進めるとともに、緊急支援活動を支える3,700万米ドルの資金を国際社会に求めています。
<保健分野>
被災地のほとんどの地区では、保健・医療施設が被害を受け、すべての医薬品が損なわれ、保健・医療従事者も避難を余儀なくされています。ワクチン用冷蔵室も破壊され、ワクチンは洪水で流されました。これらの地区は、洪水が発生する前から健康指標が最も低い地区であり、コレラを含む水に起因する感染症のリスクが高い状態です。
ユニセフは、命を守るための医療機器、必須医薬品、ワクチン、輸送のための資材を提供し、避難している人々に届けています。ワクチンを運ぶコールドチェーンの状況評価を進め、コレラとポリオの予防接種がすでに4,000人以上の子どもたちに行われました。また急性水様性下痢症、コレラ、はしか、呼吸器疾患、その他の病気を予防するための啓発メッセージを、被災地域における支援活動や様々な広報手段を通じて発信しました。
<栄養分野>
洪水被災地域は、パキスタンの中でも子どもたちの慢性・急性栄養不良の割合が高い地域です。もともと栄養状態が悪い上に、下痢が増加し食料が手に入れにくくなっていることは、多くの家族や子どもを含む約68万2,000人を深刻に脅かしています。ユニセフは、微量栄養素の配布も含め、女性と子どもに治療を提供するための資金と資源を緊急に必要としています。
<水と衛生分野>
バロチスタン州とシンド州では、最大で30%の給水施設が被害を受け、被災したコミュニティでは安全な飲料水を手に入れることができなくなっていると推定されます。野外で排泄せざるを得ない人々が増えており、コレラなどの水と衛生に関連する病気のリスクが高まっています。150万人が水と衛生の支援を必要としていると推定されています。ユニセフは、手遅れになる前に、清潔で安全な飲料水を提供するための資金と資源を緊急に必要としています。ユニセフはまた、損壊した給水場の修復や、石けんや衛生物資の配布を計画しています。
<教育分野>
パキスタン全土で少なくとも約1万8,000校が被害を受けました。そのうち、1万5,842校がシンド州、1,180校がパンジャブ州、544校がバロチスタン州にあり、教育を必要とする32万5,660人の子どもたちが影響を受けています。
最も被害の大きかった場所のひとつであるバロチスタン州のラスベラ地区には、仮設学習センターが設置されました。ユニセフは、バロチスタン州の1万5,000人の子どもたちに支援を届けるべく、仮設学習センターの拡大や学用品の提供を進めています。またユニセフは、児童・生徒用学習キット(文房具が入ったスクールバッグ)を5万セット、幼稚園キットを450セット、レクリエーションキットを450セット、さらに教育資材が入った「箱の中の学校」キットを193セット、72人の子どもが入ることができる教室用高性能テント20張の提供も目指しています。
<子どもの保護分野>
国連の緊急ニーズ評価によると、女の子の43%、男の子の45%、養育者の55%がストレスの兆候を示していると報告されています。また子どもたちは、破損した建物、洪水による溺死、ヘビなど、洪水に関連するさまざまな新たな危険にさらされています。障がいのある子どもたちは、基本的なサービスへのアクセスが途絶えたことで、より弱い立場に置かれています。ユニセフは、子どもたちや家族、コミュニティに対し、子どもの保護に関する情報や利用できるサービスに関する情報を提供するための資源と資金を緊急に必要としています。ユニセフは、政府によるコミュニティを基盤とした対応策を支援し、特にメンタルヘルスに関する支援を提供しています。
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ユニセフ「自然災害緊急募金」ご協力のお願い
地震や津波、洪水、台風やサイクロン、干ばつなどの自然災害に苦しむ子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「自然災害緊急募金」を受け付けております。パキスタンでの洪水の影響を受けた子どもたちを含む、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。
1. ホームページから
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/disaster/2010.htm
※ クレジットカード/インターネットバンキング/Amazon Pay/携帯キャリア決済/コンビニ支払がご利用いただけます。
2. 郵便局(ゆうちょ銀行)から
振替口座:00190-5-31000/口座名義:公益財団法人 日本ユニセフ協会
*通信欄に「自然災害」と明記願います。
*窓口での振り込みの場合は、送金手数料が免除されます。
※ 公益財団法人 日本ユニセフ協会への寄付金には、特定公益増進法人への寄付として、所得税、相続税、法人税の税制上の優遇措置があります。また一部の自治体では、個人住民税の寄付金控除の対象となります。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/