もともとは社会のあらゆる階層の人々が描かれた30メートル幅の長い作品だったといいますが、現存するのは縦1.6メートル、横7.5メートルの一部で、法王や皇帝、皇女、枢機卿、国王らがいやいやながら「死」とともにダンスを繰り広げる様子が描かれています。

作品の下部には「みんなダンスに加わりな、法王、皇帝、すべての生けるものたちよ、貧しいものも富めるものも、大物も小物も、さあ一歩踏み出して、自己憐憫などは役にはたたぬ。」といった「死」からの警告が記されています。

中世ヨーロッパでは、「死は誰にでも平等に訪れる」というメッセージが込められた「死のダンス」のモチーフが流行しましたが、現存するものはほとんどないといいます。

残っているのは一部といえど、かなりの大作。不気味でありながらどこかユーモアを感じさせる「死のダンス」は、見るものを惹きつける不思議な存在感を放っています。

15世紀のリューベックの職人、ヘルメン・ローデの傑作といわれる主祭壇も有名。

祭壇は二重の観音開きになっていて、開かれた第二面の左側には、船乗りや貧しい人々を救済する聖ニコラスの生涯が、右側には異教の偶像を破壊し殉教した聖ヴィクトルの生涯が描かれています。

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