国からの奨学金を返せずに自己破産してしまうケースが急増し、過去5年間で延べ1万5千人にものぼることを2月12日付けの朝日新聞が伝えたことで波紋が広がっている。

奨学金関連の自己破産は「16年度までの5年間」で1万5338人(延べ)で、5年前より13%の増加。無担保・無審査で安易に借りた奨学金が本人の重圧になり、更に破産者の半数弱の7230人が親や親戚など連帯保証人(および保証人)だったことから、親と子に「破産の連鎖」を呼んでいるとしている。

さらに同紙では、奨学金を借りつつ、大阪の実家から私立大へ通って卒業した会社員のケースを紹介。入学金・授業料、通学費など計800万を借りたが、卒業から3年半経ち、手取りの20万円では月4万の返済が出来ず、ついに親子で自己破産したのだという。

この厳しい教育界の現実に、SNS上でも「怖すぎる。金に追われる人生なんてやだ」「そこまでして大学行く意味あるのかな」「大学の学費が高すぎるんだよ」など、悲嘆する声が飛びかった。だが、その一方で「そもそも800万は借り過ぎ。てか、手取り20万で4万払えないの無能過ぎ」「いやアメリカやイギリスの大学はもっと高くてローン地獄だから」「朝日お得意の日本下げキター!」などと、危機を煽る論調を訝しがる声もあった。

■櫻井翔ドラマでも取り上げた?若者世代が苦悩する奨学金地獄

たしかに、数百万の借金をかかえての社会人スタートは厳しいに違いない。給付型(返済が不要)ではなく、貸与型奨学金を無担保・無審査で10代の若者に貸し付けるのは惨い話である。

前クールのドラマ『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)では、商社から校長に就任した櫻井翔(36)が「奨学金で大学に行ったけど、誰も奨学金が借金なんて教えてくれなかった」と生徒に告げる場面があった。その時、生徒は「そんなこと、知りたくなかった!」とスネて走り去る。厳しさを教えずに貸す国と、知ろうとせずにイージーに借りてしまう若者という構図が浮かび上がる。

だが、はたして「奨学金破産1.5万人」という数字は、本当に深刻なのだろうか。別の見方もある。

「1.5万人の奨学金破産者が出ているといいますが、現在410万人(16年度末時点)もの人が奨学金を返しているので、破産者の割合を単純計算しても0.4%以下です。しかも、この数字は『5年間での延べ人数』なので、1年あたりならば更に小さい数になります。4月の『東洋経済』(東洋経済新報社)によれば、『大学の奨学金の延滞率(3ヶ月以上)は平均1.3%』とも。数値だけみれば、奨学金の利用者は消費者金融や各種ローンに比べれば、むしろ優良な顧客ではないでしょうか」(全国紙記者)

数値を深刻と捉えるかどうかは、人それぞれで、大多数の者は滞らず返済に努めていて、ごく一部の人たちが耐えきれず破産に至ったと見ることもできる。朝日やNHK(16年の『クローズアップ現代+』)がこぞって奨学金破産を特集するところをみると、現政権批判の新しいネタと指摘する向きもある。

いずれにせよ、奨学金は給付金ではない。特に第二種(貸与型有利子)奨学金については、保証人さえつければ誰でも貸してくれるが、回収は消費者金融と同じで厳しい民間委託という「悪魔のささやき」であることを忘れてはならない。