麻生太郎財務大臣(77)の「森友の方がTPP11より重大だと考えているのが日本の(報道)レベル」という発言に対して、野党とテレビ・新聞メディアが「当事者意識を欠いた暴言だ」と猛反発している。その一方で、そのメディアに対し、SNSを中心としたネット世論が「国民の利益を阻害している」と反論し、まさに「政府+ネット世論」VS「野党+大手メディア」の構図の論争が繰り広げられている。

問題の発言は、麻生氏が3月29日の参議院・財政金融委員会で、アメリカを除く11カ国による「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」の新協定(TPP11)が署名されたことについて、あまりに新聞報道が少ないことについて批判したもの。これを受けて朝日新聞や東京新聞は30日付朝刊で「署名式は各紙が9日付夕刊、翌10日付朝刊で報じていた」などと反論。さらに翌日の国会でも野党側が猛反発、民進党・古賀之士議員(58)らが「森友の問題を軽んじているのでは?」と謝罪を要求した。

麻生氏は「森友に関し、公文書を書き換える話は誠にゆゆしきことで遺憾の極み。軽んじているつもりは全くない」とし訂正し、「森友と比較したのがけしからんという点については、謝罪させて頂きたい」と述べたものの、野党の批判は収まりそうにない。 立憲民主党・枝野幸男代表(53)からは、同日の記者会見で「当事者意識を全く欠いた発言だ。この妄言だけをもってしても大臣失格だ」と大臣辞任の要求まで飛び出した。

マスコミ報道だけを見ると、麻生氏がまた舌禍によってマスコミに追い込まれて窮地に立ったかに思える。だが、SNS上の反応は圧倒的に麻生氏支持の声が強かった。

漫画家・小林よしのり氏(64)らが「森友の方が重要」として「公文書改ざんを見逃せば、民主制の土台が崩壊するから、TPPが何を根拠に国益になるのかも怪しくなる」とする声もあったが、SNS上では「TPPの方が大切」とする声が多数派。「TPPは日本の国益に大きく貢献する。森友文書問題は、国会でやればやるほど、国益を毀損する」「こうやって議論させようと邪魔するのが税金泥棒なんだってば」「1.6万人のアンケートでも『森友が重要』はたったの3%だんですが」「いい加減空気読めなくて悲しい」などの意見があがっていた。

省庁による決裁文書改竄は、もちろんゆゆしき問題である。だが、国会で森友に触れた日数は126日、国会の1日の運営費が3億円だとしても378億円分(全てではないが)もの建設的な議論の機会が損なわれているのはいがかなものか。TPPだけではなく、北朝鮮問題や憲法改正議論、ロシア問題や拉致事件、放送法の改定など、この時間で出来たことは計り知れない。麻生氏が詫びたのであれば、野党とマスコミも森友問題で国益を損ねたことをまずは詫びねばならないはずである。

Japan's Deputy Prime Minister and Finance Minister Taro Aso speaks to reporters in Tokyo, Japan March 12, 2018. REUTERS/Toru Hanai (Japan)