「美女と野獣」「オルフェの遺言」など、コクトーが手掛けた映画を鑑賞できるコーナーもあり、多方面で活躍したコクトーの多才ぶりを余すところなく紹介しています。
ちなみに、要塞美術館とジャン・コクトー美術館のチケットは共通。一見まったく異なる性質をもつ新旧の美術館は、まさに「ふたつでひとつ」のコクトー美術館なのです。
・市庁舎の「コクトーの結婚の間」
婚姻当日、カップルが婚姻の宣誓を行う市庁舎の結婚の間。ここでは、1957年から1958年にかけてコクトーが手掛けた特別な作品を目にすることができます。
壁と天井いっぱいに描かれた幻想的な壁画が見る者を別世界へといざなうこの空間は、当時の市長からの依頼によって実現しました。壁画や天井画はもちろんのこと、ドアや照明、鏡、椅子にいたるまですべてがコクトーの手によるものです。
正面に大きく描かれているのは、若い漁師とその新妻の顔。新婦はマントン特有の帽子をかぶり、新郎の目は魚の形をしています。
横の壁面には昔ながらの結婚祝いの場面や戦いの場面が描かれており、現実離れしたどこか神話的な雰囲気をたたえています。
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