昨年の紅白大トリもつとめた、国民的フォークデュオ・ゆずがバッシングと酷い中傷にさらされている。

ゆずは4日に新アルバム『BIG YELL』(SENHA&Co.)を発売したのだが、その中の一曲「ガイコクジンノトモダチ」(作詞・作曲は北川悠仁が担当)に、「美しい日本」「靖国の桜」「国歌」「国旗」といったフレーズがあったことから「ネトウヨ(※ネット右翼)的だ」などとして一部から心無い批判が噴出している。

同曲は「日本が好きな外国人の友人」を持った「僕」が、あらためて「日本」と「僕」のかかわりを考えてこなかったことに気付く様を、明るくコミカルに描いたフォーク調の曲に仕上がっている。

納豆は苦手だが、お箸はうまく使える外国人の友人がこんなことを言う。「私、日本がとても好きなんです。あなたはどこが好きですか?」と。そこで「僕」ははたと、日本に生まれ育ち、日本を愛しているのになぜか「知らないことばかり」であることに気付く。そして曲は「国歌はこっそり唄わなくっちゃね」「美しい日本 チャチャチャ」と続いて行く。

さらに二番は、外国人の友人は「もう二度とあんな戦いを共にしないように」と祈ってくれるという展開。おそらく友人はアメリカ人なのだろう。僕は「右だの左だのって」深刻に騒ぐテレビを傍目に、「君と見た靖国の桜はキレイでした」と、過ちの戦争を乗り越えて友情を深める。そして、僕は「どうして胸を張っちゃいけないのか?」と疑問を持ちつつも、「国旗はタンスの奥にしまいましょう」と「平和な日本」に呆れているようにも取れる歌詞であった。

たしかに、我々は日本にいると、日本人であることを意識しない。それゆえ日本の良さに気付くことも少ない。国歌を誇らしげに唄い、国の存立のために命を落としたすべての先達に対して当たり前のように敬意を払う外国人たちを見た時に、自分たちは間違っているのではないかと我に返る。

海外に行ったり、外国人と話す瞬間にだけ、国を意識する「日本人になれる」のかもしれない。そういった意味で、ゆずは右や左といった尺度でなく、世界的にはごく真っ当な国民の国家観を示したに過ぎないのではないか。ところが、こうした歌詞に過剰反応とも思える噛み付き方を見せたものたちがいる。

■政治色を持ち出すな…でも国の批判なら許される?

「総理とご飯食べてないか」「『国歌はこっそり歌わなくちゃ』なんて、どっかの国に占領されたレジスタンスか? 現実は、君が代に起立しない教師は減給されるのに」とつぶやいたのは、映画評論家の町山智浩氏。指摘するのは、13年3月に大阪府立高の卒業式で国歌斉唱時に起立しなかったとして、減給処分を受けた元教諭のケースか。だが、そもそも大阪府の『君が代』の起立斉唱は11年に橋下徹府知事(当時)によって条例として教員に義務付けられている。守るのは公務員として当然である。それをさも虐められる被害者のように言うのは如何なものか。「愛国心を持ったらいけないの」と疑問を呈するだけで、ヒステリックにバッシングする人たちがいるからこっそり歌わなくちゃいけないのである。

ほかにもソーシャルメディア上には「ポップスに政治を持ち込むな。政治的すぎて聞く気が失せる」「もはや忖度アーティストと呼ぶにふさわしい」「来年の安倍首相の『桜を見る会』に出たいんじゃね?」などと批判する声もあった。だが、その一方では「これが普通の日本国民の声だろ」「自称リベラルがキレイごとを言うのはノーリスク。愛国心をカミングアウトする方がよっぽど勇気が必要」「歌詞見たけど こんなのが問題になって騒ぎになるこの国が怖いわ」とゆずの問題提起を好意的に受け止める声も多かった。

「歌に政治を持ち込むな」と言いながら、国や政権を批判していれば「風刺だ」「パンク精神だ」と手放しに賞賛する不思議な構図。ゆずの歌詞はヘイトなど微塵もなく、左派陣営が主張する「思想信条、表現の自由」の範疇である。アーティストの表現活動は政治運動ではない。どうか温かく見守れないものかと思うばかりだ。

A man watches buds of a cherry tree that have just begun blooming at Yasukuni Shrine in Tokyo Monday, March 21, 2016. The Japan Meteorological Agency confirmed Monday that buds of Tokyo's benchmark cherry tree of "Somei Yoshino" at the shrine started to bloom Monday, five days earlier than an average year and two days earlier than last year. (AP Photo/Koji Sasahara)