セクハラ告発が目的とはいえ、無断で録音したテープを週刊誌に売るのは、はたして胸を張れる行為なのか。23日のしんぶん赤旗が「被害者を『犯罪者』扱い 下村元文科相 セクハラ告発に」という記事を掲載したことで議論を呼んでいる。
自民党・下村博文議員(63)が22日に行った講演の中で、セクハラを告発したテレビ朝日の女性社員に言及し、「ある意味で犯罪だと思う」「テレビ局の人が隠してとっておいて、それを週刊誌に売ること自体が(福田財務事務次官が)はめられてますよ」と発言したことを批判的に報じた一件だ。下村氏は野党から批判を受けて同日の内に発言を撤回した。
下村氏は発言を謝罪しながらも、「テレビ朝日は、女性記者が取材データを週刊誌に持ち込んだことが倫理違反であることを指摘している。そして、オフレコの場での会話を隠し録音することも取材倫理違反であると思う」として、真意が女性を非難することになく、テレビ朝日の取材姿勢に疑問を呈することにあったことを示した。
ソーシャルメディア上では「こんな人物が最近まで文科相だったのか。セクハラ被害者を侮辱する事こそ犯罪ではないか」「不用意な発言→非難される→撤回。このパターンが多過ぎる」という批判があがる一方で、「弱者や被害者だったら何をしてても許されるというのは変じゃね?」「『ある意味犯罪』は言い過ぎだが信義に反するのは明らか。他のメディアになぜ言う必要があるのか?」と発言の真意を汲む声も聞かれた。
たしかに「ある意味犯罪」という言葉は、一種の比喩だとしても配慮のない不適切な発言だった。だが、女性記者がセクハラの被害者であるという庇護の元に、テレビ朝日の倫理にもとる取材姿勢が目眩しされ、ウヤムヤになるのも如何なものだろうか。下村氏が懸念した「テレビ朝日の取材姿勢」については、ホリエモンこと堀江貴文氏(45)からも苦言が呈されている。
堀江氏は20日放送の『5時に夢中!』(TOKYO MX)の中で、06年1月に証券取引法違反で逮捕される直前に、テレビ朝日の別の美人女性記者から倫理違反ともいえる仕打ちを受けたことを告白している。
堀江氏によると、女性記者は逮捕前から何度もやって来ていたといい、「堀江さん、大変ですね。心配しています」と気遣う様子で電話をしてきたのだという。それにほだされた堀江氏が、つい「つらいです」などと本音をもらすと、その会話が自局のワイドショーで放送されたのだという。
堀江氏は録音されていることも知らされておらず、記者は堀江氏に放送の許可もとっていなかったのだという。福田事務次官の場合は「セクハラに身の危険を感じた」など自衛の手段との言い訳も立つが、こちらの場合は善意を装っただまし討ちではないのか。
下村氏は「ある意味犯罪」と発言したが、残念ながら、刑法上「秘密録音」は罪に問われないという。だが、いかにジャーナリズムの正義を振りかざそうと、取材対象との信頼関係の元に話を聞いているのであれば倫理違反には違いない。下村氏は問題となった同講演で『メディアは日本国家をつぶす』とも発言している。テレビ朝日の倫理を無視した取材姿勢も、その足下を蝕む一例ではないだろうか。