二年前ぐらいに「日本会議商法」というものが流行った。日本会議という保守系の民間団体が、日本社会や政治を操るほどの権力を持っているという書籍や新聞・雑誌の記事がよく好まれていた。いまでも一部に根強い「ファン」がいることだろう。

だが少し、保守業界に関心を持つ人であれば、それはまさに虚構であることは容易に知れただろう。会員数は多いがそれは間口が広いだけで、年会費一万円で誰でも正会員になれる。日本を本当に動かすことが一万円でできるならば実に安いものだが、実際には地道な活動をしている保守系の団体のひとつでしかない。だが多くの人はそんな事情を知らないだろうから、あやしげな印象を持った人たちも多かったろう。日本会議を運営する人たちには深く同情する。

ちなみに僕は、日本会議のやることに関心がないのだが、一時期、Googleの検索で「田中秀臣 日本会議」という予測がでてきて、日本会議商法の強さを思い知り苦笑した。要するにマスコミが一度でも(事実とは違う)悪いイメージを喧伝してしまうと、それを否定するのはかなり難しいということだ。特にいまの日本では「反安倍商法」が根強い人気を得ている。「日本会議商法」も「森友・加計学園商法」とともにこの「反安倍商法」の一部である。

25日に発売された『週刊文春』もそのような「反安倍商法」の一貫であり、また実に悪質な記事を掲載していた。林芳正文部科学相が、「キャバクラヨガ」に公用車で白昼通ったこと、そしてその経営者が「元AV女優」が経営しているとも報じた。これをさらにネットメディアのリテラが、文春の記事の店舗で「セクシーなサービス」をし、林大臣が「風俗通い」をしているというネット記事を掲載し、合わせて安倍政権の対応を厳しく見る旨を書いた。だが、これらの記事は事実の裏どりを十分にしていないものだった。

筆者は一部の情報が出た24日の夜の段階で、その当該の店舗のHPや経営者と思われる人の経歴、そして合わせて公用車ルールをGoogleで一分もたたず検索することができた。そこからは『週刊文春』やリテラの記事が事実誤認も甚だしい可能性があることを知った。その後、ヨガ教室の経営者から猛烈な抗議が行われ、「キャバクラヨガ」「元AV嬢」など一連の情報がでたらめであることが表明された。経営者の発言が正しいことは、そのヨガ教室に通う有名無名の人たちの証言からもすぐに明瞭になった。事実を調査することなく「風俗」「セクシーサービス」などと断じたリテラは、なんと事実を確かめないまま「公益性」があると判断して掲載したと発表している。リテラは謝罪するとともに当該記事を削除した。

しかしなんで事実を確かめないまま「公益性」があるとして掲載したのか。その「公益性」はリテラの謝罪文を読むかぎり、まさに「反安倍」という「公益性」なのである。リテラの言い分は以下である。

「安倍官邸が前川喜平・前文科事務次官の出会い系バー通いをあれだけ激しく罵倒しながら、同じ文科省のトップにこうした閣僚を起用している問題や、この報道に対する安倍政権の対応を予測することには公益性がある」
http://lite-ra.com/2018/04/post-3971.html

つまりヨガ教室の実態もろくに調べることもしなかった、そのそもそもの理由は「反安倍」という(事実を無視するほどの)歪んだ感情なのだ。おそるべきものである。もちろんこんな事実を調べもしない政権批判など単にろくでもないしろものだ。一般のまじめな人たちに害を与える悪質な行為であろう。しかもこの謝罪文には、今後の再発防止の言及はない。同じ「反安倍」感情でまた同種の記事を書く可能性を排除できていないのではないか。

ちなみに筆者は「リテラの記事はリツイートしない」「リテラの記事を典拠にするコメントには冷笑を送る」という信条を持っている。残念なことに、この記事を書く必要から苦渋に耐え、リテラの謝罪文と削除された元記事の保存されたファイルを読んだ。無念である。

さて『週刊文春』はリテラよりもはるかにネットを含めて影響力があるだろう。だがこの記事を書いている現段階で、『週刊文春』からの訂正や謝罪などは筆者の知る範囲ではまだない。一刻も早くヨガ教室の経営者、教室の関係者、そして記事を信じた人たち全員に全力で、電車の中吊り広告で謝罪するぐらいしたらどうだろうか? 誤報は大きく、謝罪は小さくでは、「文春砲」の砲が泣く。全力で謝罪の号砲を聞かせてほしいと思っている。

しかし今回の件でつくづく思うが、「反安倍商法」はむしろメディアの「膿」の方こそを明らかにしていないだろうか?