日本最大のLGBT祭典「東京レインボープライド2018」が5月6日に東京・渋谷で行われ、パレード参加者が過去最大の7000人(主催者発表)を突破する盛況ぶりをみせた。同イベントは性的マイノティが差別や偏見にさらされない社会を目指し、さらに“生”と“性”の多様性をうたって開催されているものである。名物のパレードの他にも、浜崎あゆみ(39)らが代々木公園野外ステージでパフォーマンスを披露したり、支援の企業もブースを出店するなどした。

ところが、イベントに参加したという一般の人たちがソーシャルメディア上で違和感を訴え始めた。なんとパレードには「アベやめろ」とか「反原発」「くたばれ天皇制」などという、マイノリティ支援とはほど遠い過激なプラカードが乱れ、さらには「立憲民主党」というタスキを付けた枝野幸男代表(53)や福山哲郎幹事長(56)、共産党・小池晃書記局長(57)、また自民党・稲田朋美議員(59)らの姿も見られたのだという。

こうした同イベントに参加した一般層によるSNSへの訴えに「LGBTに便乗した政治利用だ」「なんでタスキを付けて政党名をアピールしてんの?」「LGBTを食い物にするな」「安倍政権批判なんてLGBTに全く関係ない」など批判をする声が噴出した。

批判が殺到した立憲民主党の公式アカウントは7日に「レインボープライドへ各党が参加したことに対し『LGBTの政治利用だ』という批判リプが多数寄せられています。しかしこの時代において、LGBTへの理解を広め、お互いに違いを認め合う良い社会を作ることは、党派を超えた政治の務めだと思います」と弁明ししている。

なぜ日本では「LGBT」がこうも政治利用されてしまうのか。NEW’S VISION編集部では、国内のLGBT問題やゲイリブ運動を研究してきた、ジャック・K氏に、政治利用される「和製LGBT」の抱える問題点を聞いた。

■当事者は置いてけぼり?電通が仕掛け、左派とフェミが食い物にしたLGBT

「じつは日本のLGBTは当事者たちの多くが醒めている」と嘆くジャック氏。自身も一人のゲイとして、マスコミに喧伝されるLGBTブームを距離をとって見ているという。

「LGBTの9割をしめるゲイも、レズビアンやバイセクシャルもそれぞれバラバラに暮らしているし、別に仲が良かったり交流がある訳でもありません。抱えている問題も別々。また、それら性的志向と、生まれもって心と身体の不一致を病として抱えるトランスジェンダーも全く別ものです。それらをあたかも”同和やアイヌ、在日に続く新しい被差別民”であるかのように、一括りに仕立て上げようとする意図を感じ、反発する当事者たちも多いんです」

一般層が漠然と持っているLGBTムーブメントに対する違和感は、差別的なヘイトでも、日本の社会運動がなじまない土壌が原因でもなさそうだ。実際、海外でもLGBとTを別に考えようとする「Drop T」なる動きもある。では、日本でLGBTを仕掛けているのは何者なのか。

「日本でLGBTが注目され始めたのは、2013年に電通が『日本の5.2%がLGBTに該当』という調査を発表してからです。しかし、思ったように社会が食いつかなかった。すると15年には同社は『7.6%が該当』『市場規模は5.94兆円』というデータを出してきた。そして電通の松中権氏が渋谷区と同性婚をしかけて”意識高い系”の層を中心に盛り上げようとした。ところが、同氏が異動でLGBT問題から離れ、電通も金にならないと踏んだのか、手を引き始めたんです」

だが、その後、収束するかに見えたLGBTに興味を示したのは左派とフェミニストら活動家たちだったのだという。

「もともとLGBTとリベラル勢力とは親和性が高い。一部の人がゲイリブなど活動家になることもあります。LGBTは動員が欲しく、活動家には弱者の大義が必要。そんな利害の一致もあり、のりこえねっとやしばき隊といった市民活動組織が運動に入り込むようになっていきました」

その結果、国会議員が着慣れない派手なTシャツに身を包んで行進し、一部の活動家がLGBTとは関係のない反アベを叫ぶ。一般層が感じる「違和感」の正体は、これだったのではないのか。

数年前、編集部員は一度だけNY訪問中に世界最大級とも言われる同地のレインボーパレードを目の当たりにしたことがある。民主党政権の影を感じなくもなかったが、マイノリティがより切実に差別と戦う社会背景があり、何より生と性を謳歌するという意味で明るく、華やかだったと記憶している。少なくとも、政党がLGBTにかこつけて党名をPRするような雰囲気はなかった。

マイノリティの運動を素直に受け入れられない人の多くは、決して弱者から目を背けたり、貶めるつもりは毛頭ないはずだ。「弱者よりも、弱者の代弁者が利する状況」を嫌悪するだけではないだろうか。私たちはバイアスのない弱者の声にこそ、耳を傾けなければならないはずだ。