日本は江戸時代の頃である。水戸黄門こと徳川光圀が水戸藩主になったのが1661年だ。

そんな時代からずっと建っていた村だ。何より良いのが、まだ人が住んでいる所である。家の中からは炊事の煙が上がっていたし、納屋からはニワトリがバサバサと飛び出して来た。

古い村に無理やり現代の設備を通しているのも良い。古い建物の横に置かれた古びたパラボナアンテナや、壁だけになった建物の跡に直接腕金を取り付け電線を引いていたり、歴史的に価値がありそうな壁に赤いスローガンをペンキで書いていたりする、そんな「雑な風景」が僕の個人的趣味にはたまらないのである。

ただし僕が好きな風景は、景観を汚しているとして地元の人にも、観光客にも評判は良くないそうだ。

写真を撮っていると、ブライダルドレスを着た花嫁とタキシードを着た花婿が階段から降りてきた。え? とあっけにとられていると、シャッター音が聞こえる。どうやら、雑誌の撮影をしているようだった。確かにこの村の景色は、写真の背景としてはもってこいの場所である。

ウロウロと歩いていると、ケラケラと笑いながら走る女の子がいた。10歳くらいにも見えるし、成人しているようにも見える、不思議な子だった。

声をかけられたのでついていく。

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