■怒鳴る、叩く、爆薬の中を走らせる!? 地獄の現場が感謝の場に変わった瞬間
クランクイン初日。
オープニングのシーンからの撮影でした。
とにかく怒鳴る。もう怒鳴られっ放し。
台本を丸めて叩かれる。泣くと更に怒られる。ちょっとでもセリフに福島訛りが出たら怒鳴る。演技がダメ、殺陣がダメ、発声がダメ、とにかく常に怒られる毎日の始まりでした。他のメンバーも怒られてばかりでした。
「今回のピンクはすぐ泣くな」と言われてたとか。
撮影に入る前に受けた殺陣と、マットを使った転がり方の訓練の段階で、既に泣いてばかりいましたからね。
「もう嫌だ! 辞めたい!」なんて考える暇もないくらいのハードなスケジュール。朝は5時出発なんて当たり前。今の様にCGなんて有りません。爆薬の雨あられ。スタントの方が居るにも関わらず、走らされ、転がされての満身創痍。それでもボロボロになった女子高生の私は、現場に教科書を持ち込み、空いた時間に勉強してました。絶対に卒業するんだ!と。
撮影も半ば進んだある時、訛りを叱られる事が無くなった事に気がつきます。そうです、度重なる厳しい指導で、いくら注意しても出ていた訛りがなくなっていたのです。
俳優としての勉強をさほど受けず、文字通り体当たりで演技していましたが、怒られ、怒鳴られ続けることで監督が目指し、求める方向性を何となく掴み、理解できるようになったのでしょう、台本で叩かれる回数もずいぶんと減ってきました。
そうすると徐々に、周囲を冷静に見渡せるようになってきます。ほんの少しですが自信もつき、ようやく俳優として半人前といったところでしょうか。
現場は常に大勢のスタッフが居ます。一人一人への気遣いと、大きな声での挨拶は絶対欠かせないことでした。これは今も私の中で、しっかり根づいています。
全50話の中で、千葉麗子演じるメイが主人公になる回がいくつもありました。その全てを「メイの話は俺が全部撮る!」と、東條監督は他の監督さんに任せなかったのです。メイ姫の回は特にファンタジー溢れるストーリーが多く、メイは可憐で、純真な女の子として、素晴らしく演出がなされています。
東條監督の厳しい指導には、「俳優を育て、良い作品にする」という強い信念があったのだと思います。その上で愛情を以て厳しく、理不尽とも思える指導をしていたんだと。もちろん、それに気づくには、ある程度の時間が必要でした。
その後の、ドラマやラジオの現場は、とにかく楽に感じました。いつも「東映の現場に比べれば」って思えましたから(笑)!
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