米中貿易戦争悪化に伴い人民元相場が急落した。その原因はキャピタルフライトであると予想され、これに対応する形で中国当局は国有銀行に通貨防衛のための為替介入をさせた。

「貿易戦争悪化」→「中国の輸出の冷え込み」→「企業業績悪化」→「株価下落→海外投資家の離脱」→「人民元売りドル買い」という負の連鎖が起きているわけである。また、これに連動する形での国内勢の動きもあるのだろう。中国政府は2015年の中国株式バブル崩壊以降、外貨規制を強化し、国内からのドルの持ち出しを厳しく規制した。個人の両替規制を年間5万元(83万円程度)に制限し、破ったものに対して制裁を課すようにしたわけだ。企業に対しても、基本届け出制にして、500万ドル以上の取引に関しては、より厳しい審査を課すことにしたわけだ。

これにより、一旦は収まったかに見えた人民元に対する不安が、再び市場を襲っているのである。中国の対外債務は1兆7,106億ドル(2017年末)、それに対して外貨準備高が3兆1106億ドル(2018年5月末)。外貨準備というのは、自国通貨売りなどに備え、外貨が不足したときに使う保険のようなもので、これがなくなると、通貨危機が発生する。そして、対外債務に合わせた額が必要とされるわけである。中国の場合、表面的な数字だけを見れば、対外債務の2倍近い外貨準備があるので、全く問題がないように見える。

次ページ:信用不安の際には一気に失われる可能性
  • 1
  • 2