そもそも親や兄弟や子供のせいで自殺しようと思ってる人だっているだろうに(または、親も兄弟も子供もいない人だっているだろうに)、勝手なことを言う看板である。

こういう自殺を想起させる看板は、逆効果だとして最近は数を減らしている。なくなるとなると、それはそれで惜しい気がする。

ちなみに7月19日には、山梨県がこのような取り組みを行っているというニュースもあった。

自殺者は、遊歩道から森の中に入って死ぬが、さほど奥まで進まずに決行する人がほとんどだ。遊歩道から2~300メートルのところで死体が見つかることが多い。

中には遊歩道沿いで首をくくる人もいる。知り合いが正月に遊歩道を歩いていたら、樹によりかかるように立っている人がいた。微動だにしない。よく見ると、首にロープが食い込んでいた。50前後のおじさんだった。長髪でサングラスという、ちょいワルな雰囲気だった。

このように散歩、ウオーキングしている人に発見されるケースは多い。

ただ、遊歩道からそこそこ近くても、誰にも見つからずに骨になるケースもある。歩いていると樹からロープがたらーんと垂れているのを見つける。近寄ると首吊り死体をした跡だった。服や自殺に使った脚立は残っているが、身体はもう自然に返っている。ちなみに真夏だと、人の死体は数週間で骨になる。

ロープの下には白いモノが散らばっている。人の顎の骨だった。樹海の骨は、現代人のものだ。だからほとんどの歯には、治療痕がある。博物館で見る縄文人の骨にはない特徴だ。骨を急に生々しく感じ始める。

おそらく自殺志願者が残していったのであろうモノもよく落ちている。昔だと、ミュージックテープがよく落ちていた。家に帰って聞いてみたら、荘厳なクラシックがかかって鬱な気持ちになった。

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