沖縄県の翁長雄志元知事の死去に伴う知事選(9月30日投開票)の行方が、「後継者を指名する遺言」をめぐり混迷し始めている。

保守系の方は、知事選出馬を表明していた安里繁信氏(48)が「保守一本化」のため立候補から自ら身を引き、自民・公明両党が佐喜真淳宜野湾市長(53)を推す形に収まった。ところが、辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力は後継候補をめぐって内ゲバが勃発し、足並みが乱れている。

「オール沖縄」勢からは、19日に県政与党や団体でつくる「調整会議」が、翁長氏が遺言(音声データ)で後継者に指名したとして玉城デニー衆院議員(自由党・58)を擁立する意向を示した。だが、ここで翁長氏を支援してきた与党会派である「おきなわ」が調整会議への参加を拒否。その理由は「音声データの開示を求めたが応じられなかったから」だというから驚きである。

新里米吉県議会議長によると、音声データの出所は「翁長氏の親族に近い人物」という曖昧さ。その遺言にもとづき、19日の調整会議で「直接聞きたい」と申し出る声もなかったので候補者が決まった。新里氏は音声について「細かいことは言いたくない」と弁明している。

だが、そもそも音声データを聞いたのは、新里議長たった一人。そんなあるのかどうかも分からない遺言ひとつで、県政トップの後継者人事が決まるなど、いったいどこの独裁国家の話なのか。このニュースにSNSメディア、掲示板からも「オール沖縄の団結もどこへやら」「嘘が横行する沖縄県政、こんなことだから、沖縄の政治的・経済的自立は遅れるばかりなんだよ」「知事の死に群がる権力の亡者たち」などと厳しい批判の声が上がっていた。

事態を予見したかように、すでに県内経済界の有力企業がオール沖縄から脱退を始めている。今年3月1日にはスーパー・建設の大手企業「かねひでグループ」の呉屋守将氏が共同代表を辞任・脱退。さらに4月3日には、ホテル大手の「かりゆしグループ」の當山智士社長も離脱を表明、今知事選については「他候補を支援する理由がない」として自主投票をするとしている。

県民に寄り添うといいながら、県民を蔑ろに権力闘争を繰り広げる、前近代的な選挙戦に呆れるばかりである。