こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

2016年の年末、中国政府は「限韓令」を発表しました。漢字の通り「韓国(物流や渡航)を制限する法令」のことです。その理由は、韓国政府が北朝鮮の核ミサイル開発への防衛対策として、アメリカのミサイル防衛システム「THAAD」を導入したことでした。THAADはミサイル防衛だけではなく、2,000キロメートルとも言われるレーダー探知の範囲を有します。そのため、THAADで取られたデータがアメリカ軍に送信されると、中国共産党にとって非常に都合が悪いのです。

中国共産党の文化部はTHAADを撤去しない限り、韓国のTHAADの設置場所がロッテマートが所有する不動産(ゴルフ場)という口実で、同社に対する不買運動などの嫌がらせ、韓流アイドル、K-POPなどサブカルチャー製品を全面的に禁止に。韓国の芸能人が過去に中国の番組に登場した映像にも、顔がモザイクをかける徹底排除を行いました。

そんな二年にも渡り続いている「限韓令」を、最近、密かに解禁していたようです。中国共産党は韓国に対して、常に「属国扱い」をしており、THAADの件においては、上から目線で「躾ける」ようなスタイルのため、「今から解禁だ」という政府の公式発表がなく、解禁は公とならなかったようです。

このような事態が起きたのは一体、なぜでしょうか。様々な面で考察してみます。

中国・瀋陽では、年に一度「韓国週間」(韓国の商品・文化を紹介する)イベントが一週間、開催されます。2016~17年の2年間は中止されましたが、2018年に再開しました。しかも今回は、瀋陽市政府が開催経費を全額負担しています。明らかに韓国への忖度ともいえるような過剰奉仕です。また、上海・杭州・北京などの企業では、800人以上の巨大な訪韓観光団体を作って、韓国への大量消費観光を行なっているようです。

それだけではなく、禁止されていた韓国人の芸能活動も再開されました。人気の韓国人シンガーソングライターIU-BBIBBI氏は10月中旬に北京を訪問。またiKONという男性ヒップホップアイドルグループも、同時期に天津でサイン会を行いました。2016年にはモザイクをかけられるほど厳しく禁止されていたのに、不自然さを抱かざるを得ません。

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