これに対して奥山氏は、金商法での対応が可能になるからといって、証券業者が兼業申請を出して、現状の仮想通貨業界に参入してくるかというと「基本的にはないと思う」と述べた。例えば、先月に金融庁から認可を受けたコインチェック以降、金融庁から新規で取引業者が認可されていないとし、仮想通貨交換業者として登録のためコンプライアンスについてどこまですればOKなのかが見えない状況と述べた。また「どうすれば新しい仮想通貨が取り扱えるようになるのか」の目処についても、見えていないと話した。

「五里霧中だ。制度的にはだいぶクリアに見えて来つつあるんですが、実態としては一向にまだ進み始めていない」

奥山氏は、証券会社について「仮想通貨を始めて自社のビジネスをリスクに巻き込んでいくわけにはいかないだろう」と指摘。ビジネスの先行きが不透明である限り、法律に適応するためのコストやリソース配分が負担になるのではないかと予想した。

その上で奥山氏は、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)などの形で今の金商業者が参入するとしても、現在の仮想通貨交換業者とは異なり、「別箱、別エンティティーとしての業者を立てて、STOやデリバティブを行っていくのではないか」と予想した。

また奥山氏が問題視したのは、雨後の筍のよう仮想通貨が乱立していること。仮想通貨の詐欺的な部分をフォーカスする週刊誌などが後を立たない中、世間での仮想通貨に対するイメージとSTOなどについて第1線で話す人にとっての仮想通貨のイメージのギャップが大きいことに危機感を示した。

「多様化していく仮想通貨をいかに巻き取るか。(中略)実態を押さえつけにいかなければならない。キャッチアップしなければならないところに関して、今のギャップのままでいいのか問題意識を持っている」

その上で「昨年は世界で700の仮想通貨が増えたのに、日本は1個も増えていないという実態をいかにそぐわせていくか」が課題になると付け加えた。

今年の展望
最後に河合氏は、ステーブルコインなどを使って「ブロックチェーン上でデジタル資産が動く時代」が来ていると話した。「海外への送金を銀行を通してやるのか?という話になる」と指摘し、実際、ペイメント(支払い)のニーズが今年は出てくると予想。当初の資金決済法が想定していたように、投機の世界ではなく、実際に使われる世界への道筋が着々とできつつあると述べた。

一方、奥山氏は、分散化しつつあるものに対する法適用や自主規制は難しいものがあるとし、「時代の流れに対する適用をいかに進めるか」を強調。ただの投機やマネーゲームではなく、実態として利用される市場にしなければならないと述べた。

金融商品に近い性格を持ちつつある仮想通貨。その恩恵を受けて仮想通貨の普及が進む部分とカバーしきれない部分がはっきりとするかもしれない。春の法案提出以降、この2つのせめぎ合いには注目だ。

(記事提供:コインテレグラフ日本版)
コインテレグラフ日本版は世界中で読まれている仮想通貨ニュースメディア大手「Cointelegraph」の日本語版です。新聞社やTV局出身者で構成される編集部が海外チームと連携しながら、仮想通貨相場を動かすニュースを発信し続けています。

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