報告書が指摘するETHの長期的な価値提案に関する二つ目の懸念は、基本的に「仮想通貨はいんちき商品」という5年近く前からある批判的な見方だ。

デルファイ・デジタルの報告書は、この議論を次のように要約している。
「将来、価値が高まるのは『価値の保存手段』として有力な仮想通貨だという理論が立てられている。つまり、たとえイーサリアム・ネットワークの使用率が高くても、参加者たちは必要に応じてETHを使用するが、価値の保存手段として魅力的な通貨を保有するためにその後すぐにポジションを手仕舞いにするということだ」

また価値の保存手段としてのETHの有用性に関して、同報告書はイーサリアムがETHについて、価値の保存(SoV)手段としての有用性よりも機能に重点を置いているという批判がある事に言及する。

この問題に関するデルファイ・デジタル独自の見解について、報告書は「長期的に見てSoVとして認められる上ではビットコインの方が強力な特性を持っていることには同意する。だが我々は、イーサリアムが今後SoVとしてより優れた地位を確立するために、なんらかの変更を行うことができると信じている」としている。

3.高い流通速度が価格を下落させる
報告書が挙げているもう一つの主な懸念が流通速度(ベロシティ)に関する懸念だ。

「価値評価に交換方程式(MV=PQ)が当てはめられた場合、その結果として生じる高い流通速度が理論価格を押し下げる可能性がある」と報告書は指摘している。

だがデルファイ・デジタルは、ETHが今後予定するセレニティというアップグレードにおいて収益を生み出す資産として使用されることから、通常の方法では正確な流通速度が割り出せないともしている。ETHの将来の潜在的価値をめぐるこの懸念について、報告書の見解は概して楽観的なものではない。

4. プルーフ・オブ・ステークの安全性
ETHの長期的な価値をめぐる最後の懸念として報告書が挙げているのが、イーサリアムのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行にまつわる問題だ。報告書はこの変更のプラス面とマイナス面を検証している。

利点
・PoWよりも遥かにマイニングのエネルギー効率がいい
・マイニングに専用のASICハードウェアが必要ない
・プロトコル違反にはペナルティが導入され違反者は保有ETHが減らされる
・ネットワークの中央集権化の緩和
・ステーキングのためにETHがロックされ流通速度がある程度抑えられる
・ステーキングによってETHが利益を生み出す資産になる(報酬がもらえる)

懸念点

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