このたび、サッカー元日本代表・高原直泰氏が率いる沖縄SV株式会社(以下「沖縄SV」)とネスレ日本株式会社(以下「ネスレ」)が、沖縄県名護市、琉球大学と連携し、沖縄で初となる大規模な国産コーヒーの栽培を目指す「沖縄コーヒープロジェクト」を開始した。
そもそも、なぜ沖縄のサッカークラブが、ネスレと組んでコーヒー栽培に取り組もうと思ったのか。その理由が、先日行われた記者発表会で明かされた。
「沖縄SV」とは、Jリーグをはじめ、アルゼンチンやドイツブンデスリーガなどでプレーをした元サッカー日本代表の高原氏が、2015年12月に沖縄を拠点に設立したスポーツクラブのこと。高原氏によれば、サッカーだけでなく、沖縄の地域資源を活用した商品開発や、農業×スポーツ(農スポ)の取り組み、地域産業との協働事業なども行っており、その一環として沖縄ならではの特産品の開発を目指して目を付けたのが、コーヒー栽培だったというわけだ。
とはいえ、近年、沖縄県では農業就業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地への対応など、一次産業における問題が発生しており、新規参入するには課題が多かった。そんななか、高原氏がジュビロ磐田在籍時代にスポンサーだったネスレに企画を持ち込んだのだ。
今後沖縄SVとネスレの両者は、沖縄県内の耕作放棄地などを活用しながら沖縄を拠点とする国産コーヒー豆の大規模な栽培を本格的に開始することで、これまで限定された量にとどまってきた沖縄県産のコーヒー豆やコーヒー製品を、新たな特産品として根付かせるべく協業していくという。さらに、環境に配慮した沖縄の新たな観光資源として、サッカー場を併設したコーヒー農園を将来的に開発するなど、コーヒー豆の栽培を通じて新たな産業を育成することも目指している。
ネスレの代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏によれば、同社が2010年から取り組んできた「ネスカフェプラン」に、高原氏の企画が合致したことから実現に至ったのだという。
「ネスカフェプラン」とは、コーヒー豆の栽培から製品の製造・流通・消費に至るまで、コーヒーに関わる全ての工程に、ネスレが持っているノウハウを提供する取り組みのこと。
昨年までに世界17ヶ国の農園で「ネスカフェプラン」によるコーヒー豆が栽培されており、同社が派遣する300人以上の農学者が、3万箇所以上の農園で、10万人以上のコーヒー生産者に対するサポートを毎年行い、計1億6千万本のコーヒー苗木を配布してきた。とはいえ、これまでの「ネスカフェプラン」はすべて海外での実績だ。つまり今回のプロジェクトは、その成果を国内でも試す良い機会ともいえるのだ。
なお、コーヒー豆の栽培に関わる農作業には、ネスレのサポートのもと「沖縄SV」の選手や関係者が従事するといい、沖縄県の気候・土壌に精通する琉球大学も、農学的見地からコーヒー栽培を行う上で必要となるノウハウ・情報の提供を行う予定だという。
去る4月23日には、プロジェクトの第1弾として、一昨年に播種され育成したコーヒーの苗木を沖縄県名護市の農地へと移植する作業も行われた。数年の生育期間を経て、コーヒー豆を収穫する予定だ。
また、今期農地へ移植する苗木のうち、100本分のオーナーをクラウドファンディングで募集中(https://www.makuake.com/project/okinawasv-coffee/)。調達した資金は、今後コーヒーを栽培していく上で必要となる財源として活用していくという。
どんなコーヒー豆が出来るかはまだ未知数だが、長期的な目線で考えると、沖縄の一次産業を巡る問題解決にもつながる画期的なプロジェクトであるといえるだろう。