2020年の暗号資産市場は、年始こそ静かなスタートとなったが、中東の地政学リスクの高まりをきっかけに動意付き始めている。1月8日の日本時間午前8時過ぎに、「イランがイラクの米軍基地にミサイルで攻撃」と報じられたタイミングでビットコインは上昇を開始。国内暗号資産取引所ZAIFでは、昨年11月18日以来となる90万円台乗せが見られた。一方、リスク回避の動きが強まり株式市場では日本株が大幅安となっているほか、為替市場ではドル安が進行している。株式や為替市場でリスク回避の動きが強まった反面、暗号資産とりわけ時価総額が大きいビットコインに投資資金が向かう格好となった。地政学リスクが高まった際、今回のような「株売り、ビットコイン買い」の動きが見られるイメージが強い。そこで、ビットコインと代表的な株価指数等との相関関係を検証してみた結果、様々なアセットクラスとの相関性が乏しいことがわかった。そして、そのようなビットコインをポートフォリオに入れるメリットを解説したい。
まずは、米国株とビットコインとの相関関係の検証結果である。2017年以降、単年でのナスダック100指数とビットコインの相関係数を算出した結果、2017年は「0.81」、2018年は「−0.03」、2019年は「0.65」という結果となった。2017年の「0.81」は「強い正の相関有り」とみなすことができるが、2018年は「全く相関無し」、そして、2019年は「強い正の相関有り」という状況である。単年で見るとまちまちとなっていることから、年ベースでの検証では明確な相関があるとはいえない。ちなみに日本株を含む先進国の株価指数はほぼこの相関関係と同じ結果である。
一方、香港で大規模なデモが発生していることから、香港ハンセン指数とビットコインの相関係数も検証してみた。2017年や2018年の相関係数はそれぞれ「0.75」「0.71」と「強い正の相関有り」という結果となっているが、これは他の先進国の株価指数ともほぼ同様の結果で出ているのでさほど珍しくはない。2019年に関しては、「−0.39」と「弱い負の相関有り」という結果が出ているほか、大規模デモが発生した6月以降の相関係数を確認した際、「0.27」と目立った方向性には乏しい。このデータからは、大規模デモ発生に伴う香港ハンセン指数とビットコインの価格動向は目立った相関関係はないと言えよう。
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