イタリアの人気観光地フィレンツェから、電車で1時間ほどの場所にある町ピサ。11~13世紀には海洋大国としてヴェネチア、ジェノバ、アマルフィと覇権を競ったものの、やがて衰退。16世紀初めにはフィレンツェのメディチ家に征服され、かつての栄華は失われてゆきました。
そんなピサには最盛期の頃を偲ばせる歴史的建造物がいくつも残されていますが、中でも人気なのがピサの斜塔。塔が斜めに傾いているという何とも不思議な光景が見られ、実際に目の前で見ても「何でこの塔は倒れないのだろう」と疑問だらけのスポットです。
ピサの斜塔はわざと斜めに建設された訳ではなく、地盤沈下によるもの。塔の建設は1173年に始まりますが、12年後の1185年には地盤が沈下して既に傾き始めていたというのです。塔はこの時3階部分まで完成していましたが、傾きのため工事は一時中断。
その後は傾きの修正を試みつつ第2工期、第3工期に分けて建設が進められましたが、結局傾いたまま高さ54mの塔が完成しました。塔の完成は1372年と、建設開始から199年もの歳月が費やされたのです。
さてピサの斜塔がどのくらい傾いているのかというと、傾斜はおよそ4度。手前に立っているピサ大聖堂と見比べてみても、だいぶ傾いているのが分かると思います。
正面から見ても、片方が地面に沈んでいる様子がよく見えますね。
完成後も傾きとの戦いは続き、塔がさらに傾いてしまうという危機に直面したのは1回ばかりではありません。1990年からは安全措置として公開が取りやめになり、傾斜を修正するための作業が行われました。そして約10年後の2001年には作業が終了し、再び訪問者に公開されることとなりました。
これだけ傾いていると「いつ倒れるのか」と心配になるところですが、その必要はありません。地質学者の見解によれば、あと300年は倒れる危険がないのだそうです。
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