国民の大多数がムスリム(イスラム教徒)のトルコには、人々が礼拝のために集うモスクが各都市のの至る所にあります。トルコ史上最高の建築家と評されるミマール・スィナンが設計したモスクは、大都市イスタンブールの景観を特徴づけるものですが、もちろん彼以前の時代にも、トルコではモスクの建築が行われていました。

ブルサは、1326年にセルジューク朝からこの街を奪ったオスマン朝が最初の首都を置いた場所で、世界遺産にも登録されているトルコ北西部の街です。オスマン朝が誕生したブルサには、オスマン朝初期の歴史あるモスクが残されています。その代表的なものが、ブルサの中心部に位置するウル・ジャーミィ(ブルサの大モスク)です。

ウル・ジャーミィは、オスマン帝国第4代皇帝のバヤジット1世によって1396年から1399年にかけて建設されたものです。あまりにも大きなモスクのため、近くからはその全貌を捉えるのが難しいほどです。

大ドームがいくつかの小ドームを支えるというスィナンの設計によるモスクとは打って変わって、このウル・ジャーミィは20個ものドームが並列するように天井を構成するセルジューク様式で、独特の外観をしています。

20個のドームを支えるように、モスク堂内には太い柱が何本も床に刺さっています。柱の一本ずつ、そして壁面に飾られた大小様々な額に描かれたカリグラフィー(イスラム書道)がなんとも美しく、このモスクを特徴づけているといえます。

ダイナミックなカリグラフィーで表現されているのは、クルアーンの一節や、アッラーの名、預言者ムハンマドの名で、礼拝に来る人たちは、それぞれの気が向くカリグラフィーの前や、メッカの方向を表すキブラ壁のほうに向かって思い思いの祈りの時間を過ごしています。

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