その後、1453年にコンスタンティノープルが陥落して以来、アヤイリニ教会はモスクに改修されはしなかったものの、教会として使用されることはありませんでした。1826年まで、オスマン帝国の常備軍歩兵イェニチェリによって武器などの軍需品を製造する工場として使われていたのです。

日中でも薄暗い内部は、おそらくローマ時代に建てられて修復が間に合わなかったような古びれた箇所がいくつもあります。イェニチェリたちも、自分たちにとっては他宗教の建物だったのでそこまで丁寧には扱わなかったのかもしれません。美しい装飾はほとんど残っておらず、石とレンガで造られた内装は、どこか寒々しい雰囲気すら感じさせます。

19世紀には武器などを展示する博物館として使用されていましたが、20世紀になって軍事博物館が新市街のハルビイェ地区に移されると、教会はしばらく放置されたままでした。

現在は修復も済まされ、2014年には博物館として一般公開されて、またその音響の良さを活かしてコンサートホールとしても利用されています。

アヤイリニ教会は、東ローマ帝国の教会、オスマン帝国の軍隊の武器製造所、軍事博物館、そして無宗教の博物館兼コンサートホール、という類稀なる歴史を歩み、現在もトプカプ宮殿の一部を成す建物として、日々世界中からの観光客を迎え入れているのです。

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