1998年の長野冬季オリンピックの会場にもなった、長野県の白馬村。スキーやスノーボードが満喫できる、日本有数のスノーリゾートだ。だが、白馬村が魅力的なのは冬だけではない。白馬村は、一年中楽しめる通年型観光地としての魅力も持っている。実際に現地を訪れて、そのポテンシャルを体感してみた。

旅の楽しみを語る上で、食を外すことはできないだろう。白馬村にも様々な美味しいものがあるが、自然を愛する人が集まるため、オーガニックなグルメを堪能することもできる。

スキー場「エイブル白馬五竜」のベースセンターである「エスカルプラザ」には飲食店も入っていて、そのひとつ「自然派喫茶Sol」では、地元の季節ごとの食材を活かしたベジタリアン料理が食べられる。

フードメニューのひとつ、「自家製パンのホットサンド」(700円)の中身は、日によって変わるそうで、この日はカボチャ、ビーツ、トマト。人気メニューのひとつの「無農薬おにぎり2個と大豆ミート唐揚げ5pcセット」(800円)もたいへん美味。ホットサンドもおにぎりセットもしっかりとした味わいで、動物性タンパク質が入っていなくても物足りなさはまったく感じなかった。

長野県と言えばソバも名物だが、白馬村にもソバの美味しい店は多い。また、ソバ粉を使った「白馬ガレット」も新名物となっている。ソバ粉の生地を薄く焼いたものの上に、白馬豚や信州サーモン、季節野菜などの地元食材をトッピングしている。白馬村のご当地グルメであり、食べられる店は白馬ガレットの公式サイトでチェックできる。ぜひ、各店ごとのアレンジも楽しんでいただきたい。

インドアでの物づくりも楽しめる

スキーやスノーボード、登山など、アクテイブに体を動かして楽しめる白馬村だが、インドアでの物づくりも体験できる。ソバ打ち体験も行われている他、今回体験した「白馬ガラス工房GAKU」での「とんぼ玉づくり体験」もファミリー層に人気だ。

花、水玉、うずまきなどの模様から好きなものを選んで、ガラス棒を熱で溶かしてオリジナルのとんぼ玉を作る。小学生から参加することが可能で、工房のスタッフがサポートしてくれるので、小さいお子さんや不器用な人でも問題なく、とんぼ玉のアクセサリーを作ることができる。

とんぼ玉は、偶然の作用で美しい模様ができあがることも多いので、物づくりが苦手という人こそ「自分の手でこんなにきれいなものが作れた」という喜びが味わえそう。この体験で作ったとんぼ玉を学校の自由工作として提出するご家族もいるとのこと。家族で旅行を楽しみながらお子さんの宿題もこなせる、一石二鳥のアクティビティだ。

スキージャンプ場は冬以外でも楽しめる

北アルプスの山々に囲まれた白馬村ならではのレジャーなのが、トレッキング。スキー場の施設が充実した白馬村ではリフトやゴンドラを利用することができるので、体力に自信がない人でも安心だ。

今回の訪問では「白馬五竜高山植物園」の中を散策したが、ゴンドラとリフトを使えば園の最上部まで楽々と到着できる。そこから少しがんばれば、標高1676メートルの地蔵ケルン。天気がよい日には、360度の絶景パノラマを満喫しよう。

また、7月下旬から10月までの期間限定で、土曜日や祝日の夜にはナイトゴンドラが運行されている(上り19:30~20:00、下り21:00~21:30。大人2000円、小人1000円)。星空をすぐ近くに感じられる貴重な体験になることだろう。

なお、白馬五竜高山植物園は、季節によって鑑賞できる花の種類が違う。訪問前に公式サイトなどで、どういった花が咲いているかを確認することもおすすめしたい。

白馬村の見どころのひとつとしては、「白馬ジャンプ競技場」もある。白馬ジャンプ競技場は、長野オリンピックではスキージャンプで日本勢が金メダルを獲得する舞台になった。オリンピックとパラリンピックの様々な資料が展示されたギャラリーを見られる他、ジャンプ台の頂上まで昇って見学することもできるので、冬以外でも行く価値がある。

白馬ジャンプ競技場では、冬以外でも、タイミングが合えばジャンプの練習風景が見学できる他、2020年は開催されなかったが、例年なら夏には国内外の選手による「FISサマーグランプリジャンプ白馬大会」が開かれている。冬以外でも白馬ジャンプ競技場は、必見のスポットなのだ。

ワーケーションにも最適

白馬村ジャンプ競技場のすぐ近くには、「白馬ノルウェービレッジ」という施設がある。もともとは長野五輪の際にノルウェーが建設したゲストハウスで、まさに北欧ログハウス風の建物。現在はコワーキングスペース&コミュニティスペースとして活用されている。

施設は誰でも利用可能で(コワーキングスペースは無料で利用できる!)、地元以外の企業の研修で使われたり、今注目のワーケーションのための場所としても活用されているという。建物の外には机やイスが置かれたデッキもあり、美しい山を見ながら作業することもできる。

リゾート地として人気のある白馬村には、様々な宿泊施設が存在しているが、今回利用したのはヴィラタイプの「HOPE TREE HAKUBA」。戸建ての建物に宿泊するので、通常のホテルと違って他の宿泊客とすれ違うこともなく、従業員とも最低限しか接しないので、プライバシーが保たれる。家族や仲間でリラックスして気兼ねなく過ごすには、最適のスタイルと言える。

キッチンには鍋、フライパン、炊飯器、包丁、食器、レンジなど基本的なものがそろっているので、手ぶらで来て料理を楽しむことも可能。宿泊客の中には自動車での道中で様々な土地の美味しい食材を買い込んできて、それを調理するという楽しみ方をしている人たちもいるとのこと。

wifiも完備されていて、2階建ての建物内のどの部屋でもネットが利用できる。家族旅行なら、仕事をこなしてから観光に出かける、または観光から戻って仕事をこなすという形で旅行を楽しむこともできるだろう。

紅葉やお花見など、一年を通して見どころがたくさん

白馬村内での移動手段としてはシャトルバスも運行されているが、おすすめなのが電動アシスト自転車。白馬村内には複数のレンタルサイクルがあり、観光局の働きかけで電動アシスト自転車が導入されている。実際に乗ってみると、坂道もまったく苦にならなず、快適に村内を移動することができた。

今回の取材は8月末に行なったが、9月下旬から白馬村は紅葉の見頃のシーズンとなる。白馬村ならではの紅葉の絶景として人気を集めているのが、白馬三段紅葉だ。これは秋の終わりの初雪が降るころに見られる光景で、山頂の雪の白、中腹の木々の紅葉、ふもとの木々の緑を一度に楽しめるというもの。白馬村においてもシーズン中に、ごくまれにしか見ることができない絶景だ。

絶景が楽しめるのは紅葉の秋だけではない。春には桜、かたくり、水芭蕉、福寿草などの花が見ごろを迎え、ゴールデンウィークなどには桜のお花見とスキーが同時に楽しめる。本稿の冒頭で「一年中楽しめる通年型観光地」というキーワードを出したが、まさにシーズンごとの魅力があるのが、白馬村なのだ。

 

◯自然派喫茶Sol/長野県北安曇郡白馬村神城22184-10 電話・0261-75-2101 営業時間・10:00-16:30(ランチラストオーダー15:30) 定休日・ 火曜日 ※営業時間はシーズンによって変更されます。

◯白馬ガラス工房GAKU/長野県北安曇郡白馬村北城3020-52 電話・0261-72-5567 営業時間・9:00~17:00 定休日・火曜日(水曜日不定休) ※とんぼ玉づくり体験料金は1400円から。制作時間は約10~25分、とんぼ玉の冷却時間は約40~60分。

◯白馬五竜高山植物園/長野県北安曇郡白馬村神城22184-10 電話・0261-75-2101 営業時間(五竜テレキャビン)・8:15~16:00(下り16:30)、営業時間(アルプス展望リフト)・8:25~16:15、料金(テレキャビン往復)・大人2000円、小人1000円、料金(テレキャビン往復+アルプス展望リフト)・大人2400円、小人1200円

◯白馬ジャンプ競技場/長野県北安曇郡白馬村八方 電話・0261-72-7611 営業時間(リフト運行時間)・8:30~16:30(4月中旬~11月)、9:00~15:30(12月中旬~3月)、料金・大人460円、小中学生280円

◯白馬ノルウェービレッジ/長野県北安曇郡白馬村北城3476 電話・0261-85-2340 営業時間・9:00~19:00(平日)

◯HOPE TREE HAKUBA/長野県北安曇郡白馬村神城22257-5 電話・0261-85-2416 チェックイン15:00(最終チェックイン19:00)、チェックアウト10:00

◯おじさんの店/長野県北安曇郡白馬村北城6140-1 電話・0261-72-2129 料金・電動アシスト自転車は1時間700円から。 ※レンタサイクルの貸出を行なっている店舗は複数あり、自転車の車種は店によって異なります。