「石見銀山」と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか?

「銀を産出していた場所だということはわかるけど、何となくとっつきにくい」と感じる方も多いかもしれません。

確かに、「鉱山」というと少々マニアックな印象がありますが、石見銀山は旧坑道見学だけでなく、レトロな町歩きも楽しめるスポット。

山あいに残る赤瓦の町並みは、まるで数百年ものあいだ時間が止まっているかのよう。その素朴で優しい風景に出会ったら、心のふるさとに帰ってきたような気分になれるでしょう。

町歩きを始める前に、まずは石見銀山についておさらいしておきましょう。

島根県大田市にある石見銀山は、日本を代表する鉱山遺跡。1526年の発見から1923年の休山まで、約400年にわたって採掘が続けられました。

16世紀半ば~17世紀前半の全盛期には、世界の産銀量の約3分の1を日本銀が占めていましたが、その大部分が石見銀山で産出されたものだったと考えられています。

当時、石見はまさに世界に誇る銀山だったのです。

環境に配慮し、自然と共生した鉱山運営を行っていたこと、世界的な経済と文化の交流を生み出したことなどが評価され、2007年には「石見銀山遺跡とその文化的景観」として世界遺産に登録されました。

銀生産の中心地だった「仙ノ山」には、今も約980の旧坑道や製錬所跡が、周囲の自然と溶け合いながら残っています。

石見銀山について特筆すべきは、世界遺産に登録されているのが旧坑道や製錬所跡など、直接銀生産に関わる施設だけではないということ。

世界遺産の登録範囲は総面積にしておよそ529ヘクタール。その中には、銀生産に関連する仕事に携わった人々の居住地区や、銀を輸送した街道なども含まれています。

1600年代から石見銀山の行政と商業の中心地として機能してきたのが、江戸時代の面影が残る大森地区。

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