ソマリアでの干ばつと紛争の激化により、ケニア東部のダダーブ難民キャンプに流入する難民が増加している。過密な環境での人道状況が悪化する中、ダダーブ難民キャンプを構成する3つのキャンプの一つ、ダガレイでは、重度栄養失調児の入院が急増。国境なき医師団(MSF)は人道的ニーズの高まりから緊急援助を強化しているが、危機の悪化を防ぐには広い範囲での緊急対応が必要だと警鐘を鳴らしている。

■驚異的な入院患者数の増加

2022年、MSFがダガレイの小児病棟と入院栄養治療センター(ITFC)で治療した患者は、前年から33%増加し、過去最高の1万2007人を記録。その圧倒的多数が子どもだった。子どもの入院数の驚異的な増加を裏付けるように、MSFのデータではダガレイの子どもの全急性栄養不良(ある集団における中程度および重度の急性栄養不良患者を合わせた比率)も増加傾向を示した。

ダガレイの人道状況の悪化とキャンプの医療体制がひっ迫する背景にはいくつかの複雑な要因がある。2022年10月末に宣言されたコレラの流行は続いており、難民キャンプだけでなく、ガリッサ郡とワジール郡の地域にも被害を及ぼしている。深刻な干ばつと長引く紛争により、「アフリカの角」(※)では食料や水を求めて人びとは移動し続け、さらに資金不足による人道的対応の不足が追い打ちとなり、給排水、衛生、栄養、医療、保護など広い分野で、人びとのニーズに追いついていない状況が一層深刻化している。

※アフリカ大陸北東部にある、角のように突出する地域。エリトリア、ジプチ、エチオピア、ソマリア、ケニアの各国が含まれる。

■2023年はさらに人道危機が悪化

今年も難民をめぐる状況は厳しそうだ。2022年12月、国連人道問題調整事務所(OCHA)は2023年3月から5月まで6期連続で雨量不足の雨期になると予測。「アフリカの角」における人道危機は規模・深刻さ共に悪化するとした。人道援助機関・団体は、今後予想される 援助活動への資金削減を懸念している。ニーズが急速に高まっている時に、さらに活動を縮小せざるを得なくなるからだ。

MSFは、地元の人びとや他の人道援助機関・団体と連携し、ダガレイ・キャンプでの包括的な医療にとどまらず、緊急援助を強化している。2カ所の医療施設を開設し、50基のトイレを建て、2基の貯水タンクを設置。さらに、キャンプ郊外に住む新たに到着した約800世帯にビニールシートと床用のマットを配布した。MSFはダガレイ・キャンプの周辺に住む最も弱い立場の難民を対象に活動しているが、ダダーブの人道危機の悪化を防ぐには広い範囲での対応が急務だ。

■長期的な解決策も必要

MSFは援助国に対し、救命と保護に対応するための迅速な資金援助の開始を呼びかける。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、より多くの人びとがダダーブに向かうと予想される乾期が近づく前に、混雑したキャンプから最大で8万人の難民を受け入れられるよう、2018年に閉鎖されたイフォ第2キャンプ再開のための資金拠出を援助国に要請している。援助国が要請に応じ、緊急対応がとられない限り、難民の流入は人道援助団体が対応できるレベルを超えて危機を悪化させる可能性がある。

ダダーブの難民は30年にわたる長期的な緊急事態から抜け出せないでいる。難民キャンプで深刻化するニーズへの対応が当面の優先事項であるとしても、ケニアの法的枠組み、特に2022年に施行された難民法に盛り込まれた難民に対する長期的解決策の実施も同様に重要である。なぜならば、ダダーブへの適用は遅々として進んでいないからだ。

ダダーブには現在、難民登録を済ませた23万3000人以上が暮らし、その多くは30年以上キャンプで生活している(※)。また、滞在許可証を持たない人は8万人以上おり、2022年だけでも5万人以上がダダーブに到着しているが、まだ正式に難民として登録されていない。

MSFは、30年にわたるキャンプの歴史のほとんどにおいて、ダダーブとその周辺で医療活動を展開。現在はダガレイ・キャンプを中心に活動し、簡易診療所2カ所と、ベッド数92床の病院を通じて、難民と地域住民を対象に基礎的な医療と専門医療を含めた包括的な医療を提供している。診療内容は、産科緊急手術を含むリプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する医療)、性とジェンダーに基づく暴力被害者に対する医療と心のケア、在宅インスリンケア、緩和ケアなどが含まれる。

※UNHCR、2022年7月