幼い子どもの点滴ルートの固定は、繊細かつ複雑な技術を要する。現場の医療従事者にとって、大きな負担となっているケースもある。
そうした現状に一石を投じるべく、アルケア株式会社(本社:東京都墨田区)が、小児患者の点滴用のカテーテル固定専用キット「フィックスキット®・PV 小児」を開発した。6月19日の発売に先立ち、メディア向けの発表会を行った。
■開発の背景にあった「1本の点滴ルートを守りたい」という声
アルケアの商品開発部の担当者によれば、「フィックスキット®・PV 小児」の開発の背景には、小児臨床現場からの切実な声があったという。近年、日本の小児医療の現場では、小児病棟の削減・集約が進み、小児科医や看護師の人手不足が深刻化している。限られた人手をやりくりしながら、患者の命を守るための高度な医療を提供する必要に迫られる場面も少なくない。
つまり、小児病棟の現場では、「安全の確保」と「医療従事者の業務の効率化」という、一見、相容れない課題と常に対峙しているのだ。
今回の「フィックスキット®・PV 小児」開発には、国立成育医療研究センター(開発当時)の塚本桂子医師も参画。塚本医師は、小児病棟の看護師にとって負担感の大きい仕事の1つが「点滴ルートの確保」だと語る。
常に手足を動かしている子どもの点滴ルート確保は、難易度が高い。容易に外れないようにしっかり固定しながら、点滴漏れをしていないかなど、観察可能な状況を維持する必要がある。熟練の看護師の「工夫」や「技術」に依存している現場が多いのが実情だ。
「現場では、現場の個人の“工夫”によって現場が成り立っています。その工夫をなんとか標準化できないか、と考えていました」と、塚本医師は開発のきっかけについて振り返る。
アルケアの開発担当者によれば、開発時に追求したのは、強固な固定力、皮膚への負担軽減、観察性、「熟練の技」の標準化と効率化だ。現場の事情に寄り添いながら試作を重ね、試行錯誤を経てようやく発売に至った。
「小児医療の市場規模を踏まえると、採算などの理由から、なかなか企業に現場の声が届きませんでしたが、唯一アルケアが耳を傾けてくれました」と塚本医師は語る。
「フィックスキット®・PV 小児」は、突然の動きによる点滴のカテーテルのズレや抜去のリスクを低減する強固な「360度固定」、刺入部分の観察がしやすい構造、小児のデリケートな皮膚への負担を軽減する仕様が特長だ。滅菌された状態でキット化されており、経験・スキルに関わらず、スムーズで衛生的な固定化処理が可能となる。多忙な医療従事者にとって、時間的・心理的なゆとりの創出をサポートする製品となるかもしれない。