パレスチナのガザ地区で3月30日、パレスチナ難民の帰還を求めるデモ行進が始まり、イスラエル軍と衝突した参加者の一部に死傷者が出た。国境なき医師団(MSF)は1日から4日までの間に銃撃を受けた患者102人を受け入れた。デモは4月6日にも予定され、同様の抗議行動は5月15日まで続くことが予定されているため、MSFは負傷者の増加に備えて緊急の医療態勢を強化している。

■外傷患者は長期のケアが必要

デモ行進初日の30日は、パレスチナ人にとっての「土地の日」で、数万人のパレスチナ人が「帰還大行進」に参加するために集結していた。ガザの保健省によると、わずか1日で1415人が負傷したほか、758人がイスラエル軍の銃撃を受けた。負傷者は主に若い男性で、全員が保健省の医療施設で治療を受けた。

MSFが受け入れた102人の患者はいずれも下肢に銃撃を受けており、MSFの外傷とやけど専門医療施設3ヵ所に入院した。患者の35%超が複数回の手術や長期のリハビリが必要な骨折を負っている。その他の患者は、主に筋肉の軟部組織を負傷しており、外科手術と数週間におよぶ包帯交換などのケアが必要になるものとみられている。

パレスチナでMSFの活動責任者を務めるマリー=エリザベス・イングレスは、「昨年12月以来、イスラエル軍に国境地帯で撃たれる人が増えていました。トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都として認めると発表したことを受け、パレスチナ人の抗議活動が起きていたのです。昨年11月以前と比べると、外傷の患者数は、1ヵ月あたり20人から毎週20人に急増していました」と話す。

MSFはガザにある公衆衛生施設内のひとつに新しい診察室を設けて、専門的な看護や包帯交換ができる術後ケア態勢を強化する。また、保健省の医療スタッフと緊密に連携、専門外科チームをすぐに派遣できるように待機させている。これにより、地元病院の支援や外傷患者の経過観察期間をより長くとれるようになる。さらにMSFは100人以上の負傷者の治療に対応できる使い捨ての医療物資と医薬品が入った救急キットをガザ保健省に寄贈した。